「お腹が痛くなりやすい」「緊張…
公開日:2026年05月13日
更新日:2026年05月13日

目次
「右下のお腹が痛い」
「もしかして虫垂炎、いわゆる盲腸ではないか」
「痛みが続いているけれど、様子を見てもよいのか」
外来では、このようなご相談を受けることがあります。
右下腹部の痛みと聞くと、まず虫垂炎を思い浮かべる方が多いかもしれません。
たしかに、虫垂炎は右下腹部痛の代表的な原因です。
しかし実際には、右下腹部の痛みは虫垂炎だけで起こるものではありません。
大腸の病気、腸炎、便秘、尿路結石、婦人科領域の病気など、さまざまな原因が考えられます。
横浜市緑区・中山駅近くの横濱おなか診療所では、消化器内科・肛門外科・内視鏡検査を行う立場から、腹痛の場所、痛み方、経過、便通、発熱、吐き気、血便の有無などを丁寧に確認し、必要な検査や適切な受診先を一緒に考えることを大切にしています。
今回は、右下腹部の痛みで考える病気について、虫垂炎だけに限らず、患者さんに知っておいていただきたいポイントを院長ブログとしてまとめます。

右下腹部にはどのような臓器があるのか
右下腹部には、大腸の始まりに近い盲腸、虫垂、小腸の終わりにあたる回腸、右側の尿管、女性では右の卵巣や卵管などがあります。
そのため、同じ「右下腹部の痛み」でも、原因が消化器とは限りません。
腸の病気のこともあれば、尿路の病気、婦人科の病気のこともあります。
腹痛の診療で大切なのは、「どこが痛いか」だけでなく、「いつから痛いか」「痛みが移動したか」「食事や排便と関係があるか」「発熱や吐き気を伴うか」「下痢や便秘、血便があるか」「排尿時の痛みや血尿があるか」などを組み合わせて考えることです。

まず考える病気:急性虫垂炎
右下腹部痛で最もよく知られている病気が、急性虫垂炎です。
一般には「盲腸」と呼ばれることもありますが、正確には盲腸の先についている虫垂という細い管に炎症が起こる病気です。
典型的な虫垂炎では、最初から右下腹部だけが痛むとは限りません。
はじめは、みぞおちやおへその周りが重い、気持ち悪い、食欲がないといった、胃腸炎のような症状で始まることがあります。
その後、時間の経過とともに痛みが右下腹部へ移動してくることがあります。
虫垂炎を疑う症状としては、次のようなものがあります。
右下腹部の痛みが続く、押すと強く痛む、歩いたり咳をしたりすると響く、吐き気や食欲低下がある、微熱がある、痛みが徐々に強くなっている、などです。
ただし、症状がそろわない虫垂炎もあります。
高齢の方、糖尿病のある方、妊娠中の方などでは、症状がはっきりしにくいこともあります。
また、虫垂の位置には個人差があるため、痛みの場所が典型的でないこともあります。
虫垂炎は軽症であれば抗菌薬治療が検討されることもありますが、炎症が強い場合や穿孔、腹膜炎、膿瘍形成が疑われる場合には、手術や入院治療が必要になることがあります。
痛みが強い場合や悪化している場合は、自己判断で我慢しないことが大切です。
虫垂炎だけではない、右下腹部痛の原因
右下腹部が痛いと「虫垂炎かどうか」に意識が向きがちですが、実際には他の病気も少なくありません。
大腸憩室炎
大腸憩室炎は、大腸の壁にできた小さな袋状のくぼみに便や細菌が入り、炎症を起こす病気です。
日本人では右側の大腸に憩室ができることも多く、右下腹部痛として現れることがあります。
発熱、右下腹部の圧痛、便通異常、場合によっては血便を伴うことがあります。
虫垂炎と症状が似ることもあり、診察だけでは区別が難しいことがあります。
感染性腸炎
ウイルスや細菌による感染性腸炎でも、右下腹部痛が出ることがあります。
下痢、吐き気、嘔吐、発熱を伴う場合には腸炎が疑われます。
ただし、腸炎と思っていたら虫垂炎だった、ということもあります。
特に、痛みが右下腹部に限局して強くなる場合や、下痢が軽いのに痛みが強い場合には注意が必要です。
便秘・ガスの貯留
便秘やガスのたまりでも右下腹部が張るように痛むことがあります。
普段から便秘傾向がある方、便が数日出ていない方、排便後に痛みが軽くなる方では、便秘が関係していることがあります。
ただし、「便秘だと思っていたら別の病気だった」ということもあります。
発熱、嘔吐、強い腹痛、血便を伴う場合には、便秘だけと決めつけないようにしましょう。
炎症性腸疾患
クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患でも、右下腹部痛、下痢、血便、体重減少、発熱などがみられることがあります。
特にクローン病では、小腸の終わりから大腸の始まりに炎症が起こることがあり、右下腹部痛として出ることがあります。
下痢や腹痛が長く続く、血便がある、体重が減ってきた、若いころから症状を繰り返すといった場合には、消化器内科での評価が大切です。
必要に応じて血液検査、便検査、大腸カメラなどを検討します。
大腸がん・大腸ポリープ
大腸がんや大腸ポリープは、初期には痛みがないことも多い病気です。
しかし、病変の場所や大きさによっては、便通異常、血便、腹部膨満感、腹痛などをきたすことがあります。
特に、便潜血検査で陽性を指摘された方、血便がある方、便秘と下痢を繰り返す方、40歳以上で大腸カメラを受けたことがない方、ご家族に大腸がんの方がいる方は、一度検査を検討してよいと思います。
横濱おなか診療所では、必要に応じて大腸カメラによる評価を行っています。
内視鏡検査に不安がある方にも、できるだけ負担を少なく受けていただけるよう配慮しています。
尿路結石・尿路感染症
右下腹部痛の原因が、腸ではなく尿路にあることもあります。
尿管結石では、背中からわき腹、下腹部にかけて突然強い痛みが出ることがあります。
痛みには波があり、血尿や吐き気を伴うこともあります。
膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症では、排尿時痛、頻尿、残尿感、発熱、背部痛などを伴うことがあります。
腹痛と一緒に尿の症状がある場合には、泌尿器科領域の病気も考える必要があります。
女性の場合に注意したい婦人科疾患
女性の右下腹部痛では、卵巣や卵管、子宮に関係する病気も考える必要があります。
卵巣出血、卵巣嚢腫の茎捻転、子宮内膜症、異所性妊娠などでは、急な下腹部痛が起こることがあります。
特に、妊娠の可能性がある方、月経周期と関連して痛む方、強い下腹部痛が急に出た方、不正出血を伴う方は、婦人科への受診が必要になる場合があります。
早めに受診した方がよいサイン
右下腹部痛があっても、軽い痛みが一時的に出ただけで自然に改善することもあります。
しかし、次のような場合は早めの受診をおすすめします。
痛みが半日以上続いている、
痛みが徐々に強くなっている、
歩くと響く、発熱がある、
吐き気や嘔吐がある、
食事が取れない、
血便がある、
黒い便が出る、
尿に血が混じる、
排尿時に痛む、
便やガスが出ない、
お腹が張って苦しい、
妊娠の可能性がある、
痛み止めを飲んでも改善しない、などです。
特に、
冷や汗を伴う強い腹痛、
立っていられないほどの痛み、
意識がぼんやりする、
腹部全体が硬く強く痛むといった場合には、救急受診が必要です。

診察では何を確認するのか
右下腹部痛の診察では、まず症状の経過を詳しく伺います。
いつから痛いのか、
どの場所が痛いのか、
痛みが移動したか、
痛みの強さは変化しているか、
食事や排便との関係があるかを確認します。
あわせて、
発熱、
吐き気、
下痢、
便秘、
血便、
排尿症状、
月経との関係、
内服薬、
既往歴なども大切です。
診察では、
お腹を押したときの痛み、
反跳痛、
腹部の張り、
腸の動きなどを確認します。
必要に応じて
血液検査、
尿検査、
腹部超音波検査、
便検査などを行い、
緊急性が高いと判断される場合やCT検査・入院治療が必要と考えられる場合には、
連携医療機関や救急対応可能な医療機関へご紹介します。
消化器内科としては、急性期の強い炎症が落ち着いた後に、大腸の病気が疑われる場合には大腸カメラを検討することもあります。
痛みの原因が一つとは限らないため、経過を追いながら丁寧に判断することが大切です。
横濱おなか診療所で大切にしていること
当院は、横浜市緑区・中山駅近くで、胃腸内科、肛門外科、内科、外科を診療しています。腹痛、下痢、便秘、血便、肛門の症状、胃カメラ・大腸カメラなど、おなかに関する幅広いご相談を受けています。
右下腹部の痛みは、「様子を見てよい痛み」なのか、「早めに詳しく調べるべき痛み」なのか、ご本人では判断が難しいことが多い症状です。
私は、痛みの場所だけで病名を決めつけるのではなく、症状の経過や生活背景も含めて、患者さんと一緒に整理することを心がけています。
また、内視鏡検査が必要な場合にも、「検査がつらそうで不安」というお気持ちに配慮しながら、できるだけ負担の少ない検査を目指しています。

まとめ
右下腹部の痛みがあると、虫垂炎を心配される方が多いと思います。
もちろん虫垂炎は重要な病気で、進行すると手術や入院が必要になることもあります。
一方で、右下腹部痛の原因は虫垂炎だけではありません。
大腸憩室炎、感染性腸炎、便秘、炎症性腸疾患、大腸がん、尿路結石、尿路感染症、婦人科疾患など、さまざまな病気が考えられます。
大切なのは、「右下腹部が痛い=虫垂炎」と自己判断することでも、「そのうち治るだろう」と我慢し続けることでもありません。
痛みの経過や随伴症状を確認し、必要に応じて医療機関で評価を受けることです。
横浜・中山駅周辺で、右下腹部の痛み、腹痛、下痢、便秘、血便、肛門の症状などでお困りの方は、横濱おなか診療所までご相談ください。
症状に応じて、消化器内科・肛門外科の視点から、必要な検査や対応を一緒に考えてまいります。
Q&A:右下腹部の痛みについてよくある質問
Q1. 右下腹部が痛いと、必ず虫垂炎ですか?
必ずしも虫垂炎とは限りません。
虫垂炎は代表的な原因ですが、大腸憩室炎、腸炎、便秘、尿路結石、婦人科疾患などでも右下腹部痛が出ることがあります。
痛みの場所だけで判断せず、発熱、吐き気、便通、血便、排尿症状なども含めて評価することが大切です。
Q2. 虫垂炎の痛みには特徴がありますか?
典型的には、みぞおちやおへその周りの違和感から始まり、時間とともに右下腹部へ痛みが移動することがあります。
歩くと響く、押すと強く痛む、食欲が落ちる、吐き気や微熱を伴う、といった症状も参考になります。ただし、症状が典型的でない虫垂炎もあります。
Q3. 右下腹部痛があるとき、大腸カメラはすぐ必要ですか?
急な強い腹痛や発熱がある時期には、まず虫垂炎や憩室炎などの急性疾患を評価することが優先されます。
大腸カメラは、血便、便通異常、便潜血陽性、炎症性腸疾患や大腸がんが疑われる場合などに、タイミングを見て検討します。
症状の状態によって適切な検査は変わります。
Q4. 痛み止めを飲んで様子を見てもよいですか?
軽い痛みで短時間で改善する場合もありますが、痛みが強くなる、発熱や吐き気がある、歩くと響く、血便や血尿がある、痛みが半日以上続く場合は、痛み止めだけで様子を見るのはおすすめできません。
薬で一時的に痛みが隠れてしまい、受診のタイミングが遅れることもあります。
Q5. どの診療科を受診すればよいですか?
腹痛、下痢、便秘、血便などを伴う場合は、まず消化器内科での相談が適しています。
排尿時痛や血尿が目立つ場合は泌尿器科、妊娠の可能性や月経・不正出血との関連がある場合は婦人科も重要です。
症状が強い場合や急速に悪化する場合は、救急受診も検討してください。









