「ピンピンコロリを日常生活に。…
公開日:2026年10月02日
更新日:2026年10月03日

目次
「ピンピンコロリを日常生活に。」
横濱おなか診療所では、病気を治すだけでなく、治療を無理なく続けながら「自分らしく元気に暮らせる時間」を支えることも大切にしています。
今回は、CPAPを続けるうえでよく聞く「鼻の乾燥・鼻づまり」について考えてみましょう。
CPAPを使い始めて「鼻がつらい」と感じることはありませんか?
CPAPを始めた患者さんから、
「朝起きると鼻の中がカラカラになっています」
「CPAPをつけると鼻が詰まって息苦しいです」
「鼻がつらくて、夜中にマスクを外してしまいます」
という相談をいただくことがあります。
治療そのものは必要だと分かっていても、毎晩こうした不快感が続けば、「自分にはCPAPが合わないのでは?」と思ってしまうのも無理はありません。
鼻の乾燥、鼻づまり、鼻水、口や喉の乾燥などは、CPAP治療中にみられる代表的な困りごとの一つです。
これまでの研究報告でも、加温加湿を使用すると鼻の乾燥や鼻づまりなどの症状が少なくなることが報告されています。
ただ、ここで一番お伝えしたいことがあります。

まず知ってほしいこと|「CPAPが合わない」と決める前に調整できることがあります
鼻が乾く、鼻が詰まるというだけで、「CPAPそのものが自分に合っていない」とは限りません。
CPAPには、
加温加湿器の設定、寝室の乾燥、マスクのフィット、空気漏れ、口呼吸、もともとの鼻炎
など、調整できる要素がいくつもあります。
AASM(米国睡眠医学会)のPAP治療ガイドラインでも、PAPによる副作用を減らす方法の一つとして加温加湿が挙げられており、治療開始後のトラブルに対して調整やフォローを行うことが重視されています。
ですから、「鼻がつらいから今日は外そう」が何日も続く前に、何が原因なのかを一つずつ整理してみることが大切です。
なぜCPAPで鼻が乾いたり、鼻づまりが起きたりするの?
CPAPは、マスクから空気を送り、睡眠中に狭くなる気道を空気の圧で支える治療です。
そのため、一晩中ある程度の空気が鼻や口を通ります。空気が乾いていたり、必要以上に空気が漏れていたりすると、鼻や喉の粘膜から水分が奪われ、不快感につながることがあります。
特に鼻マスクを使用していて、眠っている間に口が開いている場合は、鼻から入った空気が口へ抜け続ける「口漏れ」が起こることがあります。
古い研究ではありますが、鼻CPAP使用中の口漏れによって鼻腔抵抗が上昇し、加湿によってその変化が軽減されたことが報告されています。
つまり、「鼻が詰まるから口を開ける」だけでなく、「口から空気が漏れることで、さらに鼻が不快になる」という悪循環が起こることも考えられます。
マスクの種類や装着状態、フィッティングを確認し、空気漏れなどを調整することがCPAP管理の重要なポイントとして示されています。

鼻がつらいときに見直したい4つのポイント
① 加温加湿器の設定を確認する
最初に確認したいのが、CPAPの加温加湿器です。
加温加湿器は、水を温めてCPAPから送られる空気に適度な水分を加える装置です。
イメージとしては、乾いた風をそのまま鼻へ送るのではなく、少し潤いを持たせてから送るようなものです。
加温加湿によって、鼻の乾燥、鼻づまり、口や喉の乾燥などが軽減したとする研究は複数あります。
一方、「加温加湿器を使えば、誰でもCPAPの使用時間が長くなる」とまでは言えません。
複数の研究をまとめたメタ解析では、加温加湿によって鼻や喉の症状が改善する可能性がある一方、CPAPの使用時間を全体として明らかに延長する効果は確認されませんでした。
ですから目的は、数字のために加湿することではなく、毎晩少しでも快適に治療できる環境を整えることと考えてください。
② 寝室が乾燥しすぎていないか確認する
CPAP本体だけでなく、寝ている部屋の環境も見直してみましょう。
特に、
冬の暖房を使う時期、エアコンを長時間使用する部屋、もともと空気が乾燥している寝室では、鼻や喉の乾燥を感じやすくなります。
部屋が明らかに乾燥している場合は、室内の加湿を検討してもよいでしょう。湿度計があれば、「何となく乾燥している」という感覚だけでなく、寝室の状態を確認する目安になります。
ただし、室内加湿は多ければ多いほどよいわけではありません。
結露やカビが発生するほど加湿する必要はなく、CPAP本体の加湿と室内環境の両方をバランスよく整えるという考え方が大切です。
③ マスクのフィットと空気漏れを確認する
「鼻の問題なのに、なぜマスク?」と思われるかもしれません。
しかし、ここは非常に重要です。
マスクがずれていたり、サイズが合っていなかったりすると、空気が必要以上に漏れることがあります。
また鼻マスクを使用していて口が開いてしまう方では、口から大量に空気が逃げ、口や喉が強く乾燥することがあります。
CPAP機器に記録されたリーク(空気漏れ)のデータも、原因を探る手がかりになります。
マスクをきつく締めれば解決するとは限りません。締めすぎると皮膚の痛みや圧迫感が出て、かえって眠りにくくなることもあります。
マスクの種類や大きさ、ベルトの締め具合、寝返りをしたときのずれ、口漏れなどを順番に確認します。
CPAP関連資料でも、マスクは患者さんに合わせてフィッティングを確認することが重要とされています。
「漏れるから、もっと締める」だけではなく、「なぜ漏れているのか」を確認することがポイントです。
④ 鼻そのものの状態を確認する
CPAPを始めた時期と鼻づまりが重なると、すべてCPAPのせいに見えてしまいます。
しかし実際には、
- アレルギー性鼻炎
- 花粉症
- 副鼻腔炎
- 風邪
- 鼻の構造上の問題
など、もともとの鼻の状態がCPAPを使いにくくしていることもあります。
例えば、「CPAPをつけていない昼間も鼻が詰まっている」「季節によって症状が強くなる」「くしゃみや鼻水が多い」といった場合には、CPAPの調整だけでは解決しない可能性があります。
こうしたときは、CPAPを中止することを先に考えるのではなく、鼻の状態そのものについて主治医や耳鼻咽喉科へ相談することも選択肢です。

加温加湿器は「強ければ強いほどよい」わけではありません
鼻が乾くと、「加湿を最大にすればいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、加湿量を上げすぎると、チューブの中で水蒸気が冷えて水滴になることがあります。いわゆる結露です。
水がチューブ内にたまると音がしたり、マスク側へ水滴が流れてきたりして、今度は別の眠りにくさにつながります。
最近の機器では加温チューブなどによって結露を抑える仕組みを持つものもありますが、機種によって設定方法は異なります。
そのため、
「乾燥している→加湿を少し調整→翌朝の状態を見る」
というように、少しずつ調整する方が分かりやすいでしょう。
機種の設定が分からない場合には、無理に触らず、診察時や機器を扱う担当者へ確認してください。
CPAP以外の鼻の病気が隠れていることもあります
鼻づまりが続いている方の場合、CPAPの設定だけを何度変えても改善しないことがあります。
その場合は、「治療に慣れていないだけ」と我慢するのではなく、鼻炎や副鼻腔炎などがないかを確認することも必要です。
また、市販の点鼻薬には種類があり、製品によっては長期間使い続けることで、かえって鼻づまりが悪化するものもあります。
「鼻づまりがあるから、とりあえず市販の点鼻薬を毎晩使う」という対応を長期間続けるのではなく、症状が続く場合には一度相談してください。
どのくらいなら様子を見てよい?相談した方がよい目安
軽い乾燥感だけで、加湿や室内環境を見直したところ数日程度で楽になっているのであれば、経過を見ながら調整していけることがあります。
一方、
鼻づまりや乾燥のために毎晩マスクを外してしまう、CPAPの使用時間が明らかに短くなっている、鼻出血や強い痛みが繰り返す、日中も鼻づまりが続く、何を調整しても改善しない
といった場合には、次回診察を待たずに相談しても構いません。
特に急な強い呼吸困難など、CPAPの使用上の違和感だけでは説明しにくい症状がある場合には、CPAPだけの問題と決めつけず、早めに医療機関へ相談してください。
診察では、「鼻がつらいです」だけでも十分です。加えて、
「いつから」「乾燥と鼻づまりのどちらが強いか」「CPAPを何時間くらいで外すのか」「口や喉も乾くか」「昼間も鼻が詰まるか」
などが分かると、原因を整理しやすくなります。

CPAPは「我慢して使う治療」ではありません
私は、CPAP治療では「数値がよければそれでよい」とは考えていません。
AHIが下がっていても、毎晩鼻づまりに耐えながら使っているのであれば、長く続けることは難しくなります。
反対に、ちょっとした加湿設定の変更やマスク調整で、「これなら眠れそうです」と感じられることもあります。
CPAPは、機械を渡して終わる治療ではありません。
その人が無理なく続けられる状態へ近づけるために、治療を調整していくこともCPAP診療の一部です。
鼻の乾燥や鼻づまりを「仕方がない副作用」と我慢するのではなく、治療を続けやすくするための情報として私たちに教えてください。
まとめ|まず一つ変えるなら「乾燥・漏れ・鼻」の3点を確認しましょう
CPAPを使用していて鼻が乾く、鼻が詰まるときに、すぐ「自分にはCPAPが合わない」と考える必要はありません。
まず、
加湿は足りているか。
空気が漏れていないか。
CPAPを使っていない時間にも鼻症状がないか。
この3点から確認してみてください。
加温加湿器、寝室の環境、マスクのフィット、空気漏れ、口呼吸、鼻炎など、調整できるポイントは意外とたくさんあります。
治療を続けるために大切なのは、我慢することではありません。
「何がつらいのか」を見つけ、一つずつ調整することです。

Q&A
Q1.CPAPで鼻が乾くのは珍しいことですか?
珍しいことではありません。
鼻や口、喉の乾燥、鼻づまりなどの上気道症状はCPAP使用時にみられることがあり、加温加湿によって軽減することが複数の研究で報告されています。
「乾燥する=CPAPを使えない」と判断せず、まず加湿や空気漏れを確認してみましょう。
Q2.鼻が乾くので、加温加湿器の設定を最大にしてよいですか?
必ずしも最大にする必要はありません。
加湿しすぎるとチューブ内に結露が起こり、水滴や音が気になる場合があります。
まずは機器の取扱方法に沿って少しずつ調整し、朝の鼻の状態と合わせて確認するとよいでしょう。
Q3.部屋にも加湿器を置いた方がよいですか?
寝室が乾燥している場合には、室内環境を見直すことも一つの方法です。
特に暖房やエアコンを使用する季節は、CPAP本体の加温加湿だけでなく寝室そのものが乾燥していないかも確認してみてください。
ただし、結露やカビが生じるほど過度に加湿する必要はありません。
Q4.鼻が詰まるので、その日はCPAPを外して寝てもよいですか?
自己判断で中断を繰り返すより、まず原因を確認することをおすすめします。
鼻炎などで一時的に装着が難しいことはありますが、加湿、マスク、空気漏れ、鼻の治療などで改善できる場合があります。
「今日は無理だった」ということ自体も、次回診察時の大切な情報です。
Q5.鼻づまりは何科に相談すればよいですか?
まずCPAPを管理している医療機関へ相談して構いません。
CPAPの加湿設定やマスク、リークなどを確認したうえで、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻の構造などの評価が必要と考えられる場合には、耳鼻咽喉科での診察が役立つことがあります。
CPAPによる鼻の乾燥や鼻づまりは、「我慢するしかない症状」とは限りません。
まずは、加温加湿器・寝室の乾燥・マスク・空気漏れ・鼻の状態のうち、一つずつ確認してみてください。
すべてを一度に変える必要はありません。
それでも鼻がつらくてマスクを外してしまう、使用時間が短くなっている、どこを調整すればよいか分からないという場合には、その段階でご相談いただいて構いません。
横濱おなか診療所では、「ピンピンコロリを日常生活に。」という考えのもと、治療を始めることだけでなく、その治療を日常生活の中で無理なく続けられることも大切にしています。









