「ピンピンコロリを日常生活に。…
公開日:2026年09月30日
更新日:2026年10月03日

目次
「ピンピンコロリを日常生活に。」
横濱おなか診療所では、病気を治療するだけでなく、よく眠り、日中を元気に過ごし、自分らしく暮らせる時間を支えることも大切だと考えています。
今回は、CPAPを続けるうえで意外に大切な「マスク選び」についてお話しします。
「マスクが顔に当たって痛い」
「毎晩つけるのが苦痛になってきた」
「口から空気が漏れて目が覚める」
「このマスクをずっと我慢して使うしかないのでしょうか」
CPAPを始めた患者さんから、こうしたご相談をいただくことがあります。
まずお伝えしたいのは、「CPAPのマスクが合わない」ことと、「CPAP治療そのものが自分に合わない」ことは同じではないということです。
マスクにはいくつかの種類があり、顔立ち、鼻の通り方、口からの空気漏れ、寝る姿勢などによって使いやすさは変わります。
最初のマスクが合わなくても、そこでCPAPを諦める必要はありません。

「CPAPのマスクが合わない」=CPAPが合わない、ではありません
CPAPは、寝ている間にマスクから空気を送り、気道が狭くなったり塞がったりするのを防ぐ治療です。
そのため、機械本体だけでなく、顔と機械をつなぐ「マスク」も治療の大切な一部です。
靴を選ぶとき、同じサイズでも「この靴は歩きやすい」「こちらはかかとが当たって痛い」という違いがありますよね。
CPAPのマスクも少し似ています。
性能のよいマスクでも、自分の顔に合わなければ快適には使えません。
CPAPには複数のマスクタイプがあり、実際の装着感や空気漏れを確認しながら選ぶことが重要です。
つまり「合わないけれど我慢する」ことが治療の前提ではありません。
CPAPマスクには大きく3つのタイプがあります
代表的なのが、鼻マスク・ピローマスク・フルフェイスマスクです。
鼻マスク(ネーザルマスク)
鼻全体を覆うタイプです。
CPAPで広く使われている標準的なマスクで、鼻から呼吸できる方では選択肢になりやすいタイプです。
フルフェイスマスクより顔を覆う範囲が小さく、ピローマスクより鼻への接触面が広いため、「適度な安定感がある方が使いやすい」という方もいます。
一方、鼻周囲への圧迫感が気になったり、鼻筋の形などによって空気が漏れやすく感じたりすることがあります。
ピローマスク(鼻孔マスク)
鼻の穴の入り口付近に小さなクッションを当て、そこから空気を送るタイプです。
顔を覆う面積が小さいため、
「顔を大きく覆われるのが苦手」
「視界をできるだけ遮られたくない」
という方には使いやすいことがあります。
ただし、鼻孔付近に直接触れるため、違和感や刺激を感じる方もいます。
鼻マスクとピローマスクについては、研究上、治療効果や必要圧などに大きな差がないとする報告もあり、「どちらが優れているか」というより、自分が毎晩使いやすい方を選ぶことが大切です。
フルフェイスマスク
鼻と口の両方を覆うタイプです。
口からの空気漏れがどうしても改善しない場合や、鼻呼吸だけでは使用が難しい場合などに検討されることがあります。
ATSの専門家報告でも、鼻マスク使用時に口からのリークが問題となり、ほかの対応でも改善しない場合にはフルフェイスマスクを検討するという考え方が示されています。
ただし、「口呼吸をする人=最初から必ずフルフェイス」ではありません。
睡眠中の実際の呼吸の仕方は、自覚している「口呼吸」だけでは判断できないことも報告されています。
そのため、鼻の通り方、実際のリーク、CPAPのデータなども見ながら考えます。

どのマスクが合う?「顔立ち・口呼吸・寝方」から考える
マスクを選ぶ際に大切なのは、単に「人気があるマスク」を選ぶことではありません。
顔に当たる場所や圧迫感
鼻筋、頬、鼻の下など、どこに圧がかかるかを確認します。
「朝起きると赤い跡が強く残る」
「鼻の付け根が痛い」
「締めつけられて眠れない」
といった場合は、サイズやマスクの種類が合っていない可能性があります。
口から空気が漏れるか
鼻マスクやピローマスクを使っていて口から空気が漏れると、口の乾燥や不快感、睡眠中の覚醒につながることがあります。
ただし、すぐにフルフェイスマスクへ変更するとは限りません。
鼻づまりがないか、マスクそのものから漏れているのか、口から漏れているのかを分けて考えることが大切です。
口からのリークには複数の仕組みがあり、原因を確認して対応する重要性を指摘されています。
横向き寝や寝返りが多いか
寝返りをしたときに枕へマスクが当たり、位置がずれる方もいます。
「仰向けなら平気なのに、横を向くと急に空気が漏れる」という場合は、マスクの大きさや形、ヘッドギアの位置、チューブの取り回しなどを見直す余地があります。
普段どのような姿勢で寝ているのかも、マスク選びの大切な情報です。

「きつく締めれば解決」とは限りません
空気が漏れると、
「もっと強く締めなければ」と思うかもしれません。
しかし、必要以上に締めると顔が痛くなったり、皮膚に跡が残ったりして、かえって使いにくくなることがあります。
マスクは「力で押さえ込む」ものではなく、適切な位置・サイズ・形でフィットさせることが基本です。
なお、空気漏れへの具体的な対処については、このシリーズの第4回で詳しく取り上げます。
マスクを変えた方がよいサイン
次のような状態が続いている場合は、「慣れるまで我慢」と決めつけず、一度相談してみてください。
- マスクが痛くて眠れない
- 顔や鼻に強い圧迫感がある
- 空気漏れで何度も目が覚める
- 口や喉の乾燥が強い
- 寝返りのたびにマスクがずれる
- 毎晩マスクを外してしまう
- CPAPをつけること自体が嫌になってきた
近年の大規模データ解析では、CPAPを十分に使えていなかった方の一部で、マスクを変更したあと使用時間が改善していました。
特に早い時期の見直しが改善と関連していたことからも、「もう少し我慢してから」と何か月も抱え込む必要はないと考えられます。

医療機関では何を確認するの?
「マスクが合いません」と相談するとき、うまく説明できなくても大丈夫です。
たとえば、
「鼻のここが痛い」
「夜中に目の方へ風がくる」
「朝になるとマスクを外している」
「口がカラカラになる」
という伝え方だけでも、大切な情報になります。
診察では必要に応じて、マスクの種類やサイズ、装着位置、リークの状態、CPAPの使用時間、残っている無呼吸・低呼吸の指標などを確認します。
そのうえで、装着方法を調整するのか、サイズを変えるのか、別のタイプを試すのかを考えます。
すべての方に同じ答えがあるわけではありません。
CPAPを続けるために「我慢しない」という選択を
CPAPは、マスクをつけること自体が目的ではありません。
睡眠中の気道を保ち、治療を無理なく続けられる状態をつくることが大切です。
私は、「CPAPを続けられない自分が悪い」と患者さんが考える必要はないと思っています。
治療が続けにくいときには、理由があります。その理由を一つずつ探し、調整していくことも治療の一部です。
よく眠れ、日中を元気に過ごせることは、これから自分らしく暮らしていくための土台の一つです。

まとめ
CPAPのマスクが合わないと感じたとき、一番覚えておいていただきたいのは、
「今のマスクが合わない=CPAPを諦める」ではないということです。
鼻マスク、ピローマスク、フルフェイスマスクにはそれぞれ特徴があります。
顔立ち、鼻の通り、口からの空気漏れ、寝る姿勢などを確認しながら、自分に合うものを探していきましょう。
まず一つだけ行うなら、今夜CPAPを使ったときに「どこが一番つらいのか」を確認してみてください。
「鼻が痛い」「頬から漏れる」「横向きになるとずれる」など、一つ分かるだけでも次の調整につながります。
Q&A
Q1.CPAPのマスクが合わないのですが、治療をやめてもよいですか?
自己判断でCPAPそのものを中止する前に、まずマスクについて相談してみることをおすすめします。
マスクの種類やサイズ、装着方法を変えることで改善する場合があります。
治療を続ける必要性については、もともとの睡眠時無呼吸の重症度や症状なども含めて判断します。
Q2.口呼吸なので、フルフェイスマスクにした方がよいですか?
口呼吸の自覚だけでフルフェイスマスクが必要と決まるわけではありません。
実際の睡眠中の口漏れ、鼻づまり、CPAPデータなどを確認して選びます。
口からのリークが続き、ほかの方法で改善しにくい場合にはフルフェイスマスクが選択肢になります。
Q3.鼻マスクとピローマスクでは、どちらがよいのでしょうか?
一律に「こちらが上」とは言えず、使いやすさやフィット感で選ぶことが大切です。
研究では、鼻マスクとピローマスクの治療効果には大きな差がみられないとする報告があります。
顔を覆う感覚や鼻への当たり方など、実際に使ったときの感覚も重要です。
Q4.マスクから少しくらい空気が漏れても大丈夫ですか?
マスクには構造上必要な排気がありますが、意図しない大きなリークが続く場合は確認が必要です。
特に、目に風が当たる、音で目が覚める、口が強く乾燥する、治療データ上のリークが多い、といった場合はフィッティングを見直します。
次回の第4回では、「空気が漏れる・目に風が当たる」CPAPのリークへの対処法を詳しく解説します。
Q5.マスクは途中から変更できますか?
はい。治療中でもマスクの見直しは可能です。
実際、添付資料でも複数のマスクタイプから患者さんに合わせて選択する考え方が示されています。
変更方法や交換できるタイミングなどは、使用している機器や管理方法によって異なるため、受診時に確認してください。
CPAPは、「一度決めたマスクをずっと我慢して使う治療」ではありません。
まずは今夜、「何が一番つらいのか」を一つ確認してみてください。
痛みなのか、圧迫感なのか、口の乾燥なのか、寝返りをしたときのずれなのか。それだけでもマスクを見直す大切な手がかりになります。
マスクがつらくてCPAPを外してしまう日が増えている、睡眠が妨げられている、治療そのものをやめようか迷っているという場合は、我慢を続ける前にご相談ください。
横濱おなか診療所では、「ピンピンコロリを日常生活に。」を合言葉に、治療そのものだけではなく、その先にある「自分らしく元気に暮らせる時間」も大切にしたいと考えています。
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