「CPAPを始めたけれど、でき…
公開日:2026年10月08日
更新日:2026年10月07日

目次
「ピンピンコロリを日常生活に。」
横濱おなか診療所では、治療をただ「続けてもらう」ことではなく、無理なく治療を生活の中へ取り入れながら、自分らしく元気に過ごせる時間を支えることを大切にしています。今回は、CPAPを続けている方が一度は感じることのある「もうやめたい」という気持ちについて考えてみます。
「CPAPをやめたい」と感じること自体は珍しいことではありません
CPAPを始めた患者さんから、ときどきこんなお話を聞きます。
「空気が強くて苦しいんです」
「マスクをつけるとかえって眠れません」
「毎晩準備するのが面倒になってきました」
「続けているけれど、効いているのかよく分かりません」
「できれば、もうやめたいです」
こう感じたからといって、治療に前向きではないということではありません。
CPAPは、薬を1錠飲む治療とは違い、寝るたびに機械を準備し、マスクを装着する治療です。
毎日の生活の中に組み込む必要があるからこそ、ちょっとした違和感が積み重なることがあります。
ここで一番お伝えしたいのは、
「CPAPをやめたい」という一つの言葉の中には、いくつもの違う理由が隠れているということです。
そして、その理由によっては、CPAPそのものをやめなくても、マスクや設定、使い方などを調整することで楽になる可能性があります。
日本の睡眠時無呼吸症候群診療ガイドラインでも、患者さんに合ったマスクの選択、鼻づまりに対する加湿などの対応、教育や支援がCPAPの継続を助ける可能性が示されています。PubMed Central (PMC)
ですから、「もう無理だからやめよう」と結論を出す前に、まず理由を分けて考えてみましょう。

まず「やめたい理由」を分けてみましょう
診察室で「CPAPをやめたいです」と言われたとき、私はもう少し詳しくお話を聞くようにしています。
大きく分けると、次のような理由があります。
- 苦しい
- 眠れない
- マスクが嫌・痛い・漏れる
- 面倒
- 効果が分からない
似ているようですが、対処法はそれぞれ違います。
たとえば、「苦しい」という方にマスクだけを交換しても解決しないことがありますし、「効果が分からない」という方には、装置に記録された治療データを一緒に確認する方が役立つかもしれません。
原因を分けることが、解決への第一歩です。

理由①「CPAPをつけると苦しい」
空気の圧が強く感じる場合
CPAPは、空気を送り込んで呼吸させる機械ではありません。
眠っている間に狭くなろうとする気道を、空気の圧によって内側から支える治療です。
ただ、治療を始めたばかりのころには、
「息を吐きにくい」
「風に押されている感じがする」
「呼吸のタイミングが合わない」と感じることがあります。
こうした場合、実際の圧設定や装置の作動状況、空気漏れなどを確認することが大切です。
PAP治療中は使用状況や治療効果を客観的なデータで確認しながら、困っていることに対して継続的に調整していくことが重要とされています。
「苦しい=CPAPが体に合わない」とすぐに決める必要はありません。
鼻づまり・口や鼻の乾燥がある場合
「空気そのものが苦しい」と思っていたら、実は鼻づまりが原因だった、ということもあります。
鼻が通りにくい状態でCPAPを使えば、呼吸しづらく感じるのは自然なことです。
また、
- 鼻や口が乾く
- 朝起きるとのどがカラカラになる
- 鼻水が増える
- 口から空気が漏れる といった問題もあります。
鼻症状や空気漏れはCPAPを続けにくくする要因として知られており、加温加湿や鼻症状への対応、マスクの見直しなどが検討されます。
理由②「CPAPをつけると眠れない」
これは、特に治療開始直後によく聞く悩みです。
今まで何もつけずに寝ていたところへ、突然マスクとホースが加わります。
「気になって眠れない」というのは、不思議なことではありません。
最初から「一晩中つけなければ」と頑張りすぎると、布団に入ること自体が緊張につながってしまう方もいます。
まずは起きている時間に少し装着してみるなど、マスクや空気の感覚に慣れる時間を作る方法もあります。
本格的に眠る前に装置やマスクへ慣れてもらうことが推奨されています。
「眠れない」と「治療できていない」は同じではありません
ここも大切なところです。
「CPAPをつけると眠れない」という問題と、「CPAPで無呼吸が十分に治療できていない」という問題は別です。
治療データ上は無呼吸がよく抑えられていても、マスクへの違和感で眠りにくいことがあります。
反対に、本人はよく眠れているつもりでも、空気漏れなどによって治療が十分にできていない場合もあります。
そのため、本人の感覚とCPAPのデータの両方を見ることが大切です。
理由③「マスクが嫌・痛い・空気が漏れる」
CPAPでは、マスクとの相性がとても重要です。
添付のCPAP資料でも、鼻を覆うタイプ、鼻孔部分を中心に装着するタイプなど複数のマスクが紹介され、患者さんに合わせた選択やフィッティングの重要性が説明されています。
「マスクが嫌」という言葉の中にも、
「鼻の横が痛い」
「ベルトの跡がつく」
「寝返りをすると漏れる」
「目に空気が当たる」
「締めつけられる感じがする」 など、さまざまな理由があります。
空気が漏れるからといって、ベルトを強く締めればよいとは限りません。
強く締めすぎることで、かえって痛みや皮膚トラブルにつながることもあります。
マスクの種類、サイズ、位置、ベルトの締め方など、少しの調整で感覚が大きく変わることがあります。

理由④「毎晩つけるのが面倒」
これは、とても現実的な問題だと思います。
機械を準備する。
マスクをつける。
水を用意する。
定期的に部品を洗う。
さらに旅行や出張にも持っていく必要があります。
一つ一つは小さな作業でも、毎晩となると負担になることがあります。
この場合、「医学的にCPAPが効いているか」とは別に、生活の中で続けられる形になっているかを考える必要があります。
準備する場所を固定する、寝る前の動作をルーティンにするなど、小さな工夫で負担が減る方もいます。
完璧にやろうとするより、まず「何が一番面倒なのか」を一つ探してみてください。
理由⑤「CPAPの効果が分からない」
「毎晩つけています。でも、何が変わったのか分かりません」
という方もいらっしゃいます。
CPAPを始める前に強い眠気や朝の頭痛があった方では、改善を実感しやすいことがあります。
一方、もともと自覚症状が少なかった方では、「効いている感じ」が分かりにくいことがあります。
数字と体感の両方を確認します
CPAP装置には一般に、
- 使用時間
- 治療中の呼吸イベント
- マスクからの空気漏れ
- 圧の状態
などの情報が記録されています。
添付資料でも、こうした治療データを定期的に確認することが重要とされています。 モヤモヤすっきり 違いがわかる! CPAPのギモン解消Q&A
つまり、
「効果を感じない」=「効果がない」
とは限りません。
「自分は何のためにCPAPを続けているのか」が分からなくなったときこそ、一度データを見ながら治療の目的を確認してみる価値があります。

「CPAPそのものが合わない」と決める前に確認したいこと
CPAPをやめたいと思ったら、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
① 一番つらいことは何か
↓
② マスク・鼻・空気圧・睡眠・生活上の負担のどこに問題があるか
↓
③ CPAPデータでは治療できているか
↓
④ 調整できる部分がないか
この順番で考えると、「CPAPを続ける・やめる」という二択ではなくなります。
ガイドラインでも、CPAP使用中に問題が続く場合には、十分なフォローとトラブルシューティングを行うことが重視されています。PubMed Central (PMC)
それでもCPAPを続けるのが難しい場合は?
さまざまな調整をしても、どうしてもCPAPを続けにくい方はいらっしゃいます。
その場合には、睡眠時無呼吸の重症度や原因などを改めて確認し、
- 口腔内装置(マウスピース)
- 体重管理
- 睡眠姿勢の工夫
- 鼻やのどの治療
- 必要に応じた外科的治療
など、別の方法を検討することがあります。
ただし、「CPAPが嫌だから今日からやめる」ということと、「状態を評価したうえで治療方法を変更する」ということは違います。
日本のSAS診療ガイドラインでは、CPAPを中断すると閉塞性睡眠時無呼吸が再び現れることが示されており、原則として治療継続が推奨されています。PubMed Central (PMC)
当院にもすでに「CPAPをやめるにはどうすればよいか」という記事がありますので、「本当に中止できる条件を知りたい」という方は、そちらも併せてご覧いただくと理解しやすいと思います。
CPAPを本当にやめられるのはどんな場合?再評価について詳しくはこちら
まず一つするなら「やめたい理由を一言で伝える」
今回の記事で一つだけ覚えていただくとしたら、これです。
次の診察で、
「CPAPをやめたいです」だけではなく、
「○○だから、CPAPをやめたいです」と伝えてみてください。
「苦しいから」
「眠れないから」
「鼻がつまるから」
「マスクが痛いから」
「面倒だから」
「効果が分からないから」 これだけで十分です。
原因が分かれば、調整できることが見つかるかもしれません。

まとめ
CPAPを長く続けていれば、「もうやめたい」と思う日があっても不思議ではありません。
大切なのは、その気持ちを我慢することでも、自己判断ですぐに中止することでもなく、なぜやめたいのかを一度分けて考えることです。
苦しさ、眠りにくさ、マスクの違和感、手間、効果への疑問。それぞれに確認するポイントは違います。
治療は、続けることそのものが目的ではありません。
CPAPを上手に使うことも、必要に応じて治療方法を見直すことも、その先にある「昼間を元気に、自分らしく過ごすこと」のためにあります。
Q&A
Q1.CPAPが苦しいのですが、我慢して使い続けた方がよいですか?
強い苦しさを我慢し続ける必要はありません。
空気圧、マスクからの漏れ、鼻づまりなど、原因によって対応が異なります。
まず「どの瞬間に、どのように苦しいか」を主治医やCPAP担当者へ伝えてみてください。
設定などは自己判断で変更せず、治療データと合わせて確認することが大切です。
Q2.CPAPをつけるとかえって眠れません。外してもよいですか?
まずは眠れない理由を確認してみましょう。
マスクへの慣れ、圧への違和感、空気漏れ、音への意識など、いくつかの原因が考えられます。
治療開始直後であれば、起きている時間に短時間装着して慣れる方法などもあります。それでも続く場合は診察時に相談してください。
Q3.1~2日CPAPを使わなくても大丈夫ですか?
一度使えなかったからといって慌てる必要はありませんが、意図的に休む習慣にはしない方がよいでしょう。
CPAPは装着中に気道を開いて無呼吸を抑える治療で、治療を中断すると睡眠時無呼吸が再び現れることがあります。PubMed Central (PMC)
使えない日が増えてきた場合は、「続けられない理由」があるサインとして相談してみてください。
Q4.CPAPの効果を感じません。続ける意味はありますか?
体感だけでは判断しにくい場合があります。
もともと眠気などの症状が少なかった方では、CPAPを使っても「すごくよく眠れるようになった」という変化を感じないことがあります。
使用時間、残存する呼吸イベント、空気漏れなどのデータと、日中の眠気や血圧などを合わせて評価します。
Q5.どうしてもCPAPが嫌なら、ほかの治療に変えられますか?
選択肢を検討できる場合があります。
口腔内装置、体重管理、睡眠姿勢の調整、耳鼻咽喉科的な治療などが候補になりますが、適切な方法は睡眠時無呼吸の原因や重症度によって異なります。
「CPAPをやめること」を先に決めるのではなく、「自分にとってどの治療方法が現実的か」を一緒に考えることが大切です。
受診相談案内文
CPAPを「やめたい」と感じたとき、すぐに治療を中止する必要も、その気持ちを我慢する必要もありません。
まずは、
「私は、なぜCPAPをやめたいと思っているのだろう?」と一つだけ考えてみてください。
苦しい、眠れない、マスクが痛い、面倒、効果が分からない――理由が分かれば、調整できることが見つかる場合があります。
受診の際には、「うまく説明できないのですが、最近CPAPを続けるのがつらくなってきました」と、そのままお話しいただいて構いません。
横濱おなか診療所では、「ピンピンコロリを日常生活に。」を合言葉に、治療を続けることだけを目標にするのではなく、その治療がその方のこれからの生活をどのように支えられるかを一緒に考えることを大切にしています。










