突然おしりに硬いしこりができ、…
公開日:2026年08月12日
更新日:2026年08月12日

目次
痔瘻と言われたら「手術が必要?」と不安になる方へ
「痔瘻と言われたのですが、手術しないと治らないのでしょうか」
「手術をすると便が漏れるようになりませんか」
「シートン法という治療を聞いたけれど、どんな治療ですか」
痔瘻と診断された方から、このようなご質問をいただくことがあります。
前編では、痔瘻は肛門の内側から皮膚へ「トンネル」のような通り道ができる病気であることをお話ししました。
後編では、そのトンネルをどのように治療するのかを中心に説明します。
まず知っておいていただきたいのは、痔瘻の手術は全員が同じ方法で行うわけではないということです。
痔瘻の場所や深さ、肛門括約筋との位置関係を確認し、
痔瘻をしっかり治すこと と
便を漏らさないための肛門機能を守ること
のバランスを考えて治療方法を選びます。

なぜ痔瘻は薬だけでは治りにくいの?
痔瘻では、肛門の内側から皮膚まで感染によってできた通り道、つまり瘻管(ろうかん)が形成されています。
炎症が強いときには、抗菌薬などによって症状が軽くなる場合があります。
また、市販の痔の軟膏などで周囲の痛みや炎症が少し落ち着くこともあります。
しかし、それだけで瘻管そのものがなくなるわけではありません。
たとえるなら、地面の下に残ったトンネルの入り口だけを一時的にふさいでも、トンネルそのものが残っていれば、再び感染する可能性があります。
そのため、完成した痔瘻を根本的に治す場合には、手術が治療の中心になります。
ただし、痔瘻があれば全員すぐに同じ手術をするわけではありません。
まず痔瘻の形を確認することが大切です。

痔瘻の治療前には何を確認する?
痔瘻の診察では、
・皮膚側の出口がどこにあるか
・どこまで深く瘻管が伸びているか
・枝分かれしていないか
肛門括約筋をどの程度通っているか
過去にも膿瘍や痔瘻を繰り返していないか
などを確認します。
比較的浅く単純な痔瘻は、診察によって走行を把握できることがあります。
一方、深い位置にある痔瘻や複雑に枝分かれした痔瘻では、MRIや超音波などの画像検査が役立つことがあります。
必要な検査は全員同じではありません。
症状や診察結果に合わせて判断します。

痔瘻の深さと肛門括約筋との関係が重要
痔瘻手術を理解するうえで、ぜひ知っておいていただきたいのが肛門括約筋です。
これは、便やガスを漏らさないように肛門を締める筋肉です。
痔瘻のトンネルは、この括約筋の近くを通ったり、一部を貫いたりすることがあります。
浅い痔瘻であれば、瘻管を切り開いても括約筋への影響が少ないことがあります。
一方、深い痔瘻を単純に大きく切り開くと、括約筋に影響し、排便機能への影響が生じる可能性があります。
そのため痔瘻治療では、
「瘻管をなくす」だけではなく、「肛門機能をできるだけ守る」
という視点がとても重要になります。
痔瘻の主な手術方法
痔瘻にはいくつかの治療方法があります。
ここでは代表的なものをご紹介します。
名称だけを見ると難しそうですが、基本的には「トンネルをどう処理するか」という違いです。
瘻管切開開放術
比較的浅く、単純な痔瘻で行われることがある治療です。
痔瘻のトンネルを切り開いて、トンネルではなく「溝」のような状態にします。
その溝を内側から少しずつ治していく方法です。
英語ではfistulotomyと呼ばれます。
比較的シンプルで根治性の高い方法ですが、どこまで括約筋を切ることになるかが重要です。
そのため、括約筋を多く通る深い痔瘻には、そのまま適用できない場合があります。
シートン法
痔瘻について調べた方は、「シートン法」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。
シートン法は、痔瘻のトンネルにゴムや糸などを通して治療する方法です。
一度に大きく切開せず、排膿しやすい状態を保ったり、時間をかけて段階的に治療したりします。
シートンには目的によっていくつかの使い方があります。
例えば、膿や感染を排出しやすくする目的でしばらく留置する場合もあります。
また、痔瘻の位置によっては、括約筋への影響を抑えながら時間をかけて治療する方法として使用されることがあります。
「シートン法なら必ず肛門機能に影響しない」という意味ではありません。
痔瘻の形によって適応を判断する必要があります。
括約筋を温存する手術
深い痔瘻や、括約筋を多く通る痔瘻では、できるだけ括約筋を切らずに治療する方法が検討されることがあります。
これを括約筋温存術と呼びます。
代表的な術式には、LIFT法や粘膜弁を利用した方法などがあります。
LIFT法では、括約筋の間を通る瘻管を処理することで、括約筋そのものを大きく切開しないことを目指します。
ただし、括約筋を温存する方法には、それぞれ適した痔瘻の形があります。
また、再発率や治癒率にも違いがあるため、
「切らない方法だから一番よい」
と単純に決めることはできません。

「一番よい手術」は人によって違います
患者さんから、
「結局、どの手術が一番いいのですか?」
と聞かれることがあります。
実際には、すべての方に共通する一番よい手術方法はありません。
例えば、浅く単純な痔瘻であれば、瘻管切開開放術が合理的な場合があります。
一方、括約筋を深く通る痔瘻では、肛門機能を守るため、シートン法や括約筋温存術を検討することがあります。
さらに、
・痔瘻の位置
・枝分かれの有無
・過去の手術歴
・年齢
・もともとの排便機能
・クローン病などの基礎疾患
によっても治療方針は変わります。
つまり大切なのは、手術方法の名前で選ぶのではなく、ご自身の痔瘻がどのタイプなのかを確認することです。
肛門周囲膿瘍の段階では、まず膿を出す治療
まだ痔瘻として落ち着いておらず、肛門周囲に膿がたまって強い痛みがある場合には、治療の優先順位が変わります。
肛門周囲膿瘍では、まずたまった膿を外へ出す「切開排膿」が重要になることがあります。
膿がたまった空間は、抗菌薬だけでは十分に改善しない場合があります。
そのため、小さく切開して膿を外へ出し、圧力を下げることで痛みを改善させます。
その後、炎症が落ち着いた段階で痔瘻が残っているかを確認し、必要に応じて痔瘻の治療を検討します。
つまり、
膿瘍の急性期治療 と
痔瘻の根治治療
は、同じ日に必ず行うとは限りません。
病状によって段階的に治療する場合があります。

手術後の生活で気をつけること
痔瘻手術の術後経過は、行った手術方法や痔瘻の深さによって大きく異なります。
一般的には、手術部位を清潔に保ちながら、便が硬くなりすぎないよう便通を整えることが大切です。
具体的には、
・水分を適度にとる
・極端に便秘にならないようにする
・強くいきみすぎない
・医師から処方された薬を指示通り使用する
・出血や痛みの変化を確認する
などがあります。
手術によっては傷を完全に縫い閉じず、少しずつ治していく方法もあるため、治癒まで一定の期間が必要です。
「何日で治るか」「いつ仕事に戻れるか」は手術内容や仕事内容によって異なります。
手術を受ける際には、術後の通院頻度や仕事復帰の目安も含めて確認しておくと安心です。
横濱おなか診療所での痔瘻治療の考え方
横濱おなか診療所では、まず肛門の状態を診察し、
「本当に痔瘻なのか」
「肛門周囲膿瘍の段階なのか」
「どの程度複雑な痔瘻なのか」
を確認します。
すべての痔瘻を診療所内で手術することを目的としているわけではありません。
比較的軽い状態については当院で対応できる場合がありますが、深い痔瘻や複雑な瘻管形成があり、より専門的な手術が適していると判断した場合には、連携する専門医療機関へご紹介します。
大切なのは、「痔瘻だからとにかく手術」ということではなく、どの治療がその方に適しているかを考えることです。
おしりの診察は恥ずかしいと感じる方も多いと思います。
症状をうまく説明できなくても、「何度も腫れる」「膿が出る」「手術が心配」とそのままお話しいただいて構いません。
肛門外科の診療について詳しくはこちら
https://yokohama-onaka.com/medical/medical02.html
まとめ
痔瘻は、肛門の内側と皮膚との間に感染による通り道が形成される病気です。
一度しっかりした瘻管ができると、薬や軟膏だけで根本的に治療することは難しく、手術が検討されることが多くなります。
ただし、痔瘻の手術は一種類ではありません。
瘻管切開開放術、シートン法、括約筋を温存する手術など、それぞれ特徴があります。
治療で大切なのは、
痔瘻を治すこと と
肛門括約筋の機能をできるだけ守ること
の両方です。
まずご自身の痔瘻がどこを通り、どの程度深いのかを確認したうえで、適した治療を相談していきましょう。
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https://yokohama-onaka.com/blog/
Q&A
Q1.痔瘻は必ず手術しなければなりませんか?
完成した痔瘻を根本的に治す場合には、手術が治療の中心になります。
ただし、痔瘻の状態や基礎疾患によって治療時期や方法は異なります。
まず診察で痔瘻の形や炎症の状態を確認したうえで判断します。
Q2.痔瘻の手術をすると便が漏れるようになりますか?
すべての手術で便が漏れるようになるわけではありません。
ただし、肛門括約筋を大きく切る手術では排便機能への影響を考慮する必要があります。
そのため、痔瘻の深さによってはシートン法や括約筋温存術などを選択します。
Q3.シートン法は痛い治療ですか?
治療中の痛みには個人差があり、シートンの使用方法によっても異なります。
排膿目的で緩く留置する場合と、時間をかけて治療を進める場合でも経過は異なります。
痛みが強い場合には、処置方法や鎮痛薬について担当医と相談します。
Q4.痔瘻の手術は日帰りでできますか?
痔瘻の種類や手術方法によって異なります。
浅く単純な痔瘻では日帰り手術が可能な場合もありますが、深い痔瘻や複雑な痔瘻では入院治療が適していることがあります。
医療機関の体制によっても異なるため、術前に確認してください。
Q5.痔瘻は手術しても再発しますか?
適切に治療しても再発する可能性はゼロではありません。
特に複雑な痔瘻やクローン病に伴う痔瘻では、治療が長期化したり再発したりすることがあります。
治療前に瘻管の走行を把握し、その方に適した方法を選ぶことが重要です。









