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【CPAPシリーズ第6回】「CPAPをつけると眠れない…」慣れない・途中で外してしまうときの対処法

公開日:2026年10月03日
更新日:2026年10月03日

「ピンピンコロリを日常生活に。」

横濱おなか診療所では、病気を治療するだけでなく、元気に自分らしく暮らせる時間をできるだけ長くすることも大切にしています。
質のよい睡眠は、そのための大切な土台です。

今回はCPAPシリーズ第6回として、治療を始めた方からよく聞く、
「CPAPをつけると、かえって眠れない」という悩みについて考えてみましょう。


CPAPをつけたら逆に眠れない――それだけで「合わない」と決めなくて大丈夫です

「CPAPをつけると気になって寝つけません」
「せっかく眠ったのに、夜中に目が覚めて外してしまいます」
「朝起きると、いつの間にかマスクが取れています」

CPAPを始めたばかりの患者さんから、このようなお話を聞くことがあります。
睡眠をよくするために始めた治療なのに、CPAPのせいで眠れないように感じると、

「自分にはCPAPが向いていないのでは?」
「毎晩これでは続けられない」と思ってしまうかもしれません。

ただ、導入直後の違和感だけで、すぐに「CPAPが合わない」と判断する必要はありません。

マスクを顔につけ、いつもとは違う空気の流れを感じながら眠るのですから、初めからまったく気にならない方ばかりではありません。
CPAP導入時には患者教育だけでなく、初期のトラブルへの介入やサポートが推奨されています。

そのため、CPAPは、渡された機械を「我慢して使う治療」というよりも、自分が眠りやすい状態へ少しずつ調整していく治療と考えていただくとよいでしょう。


なぜCPAPを始めると寝つきにくくなるの?

CPAPで眠れない理由は一つではありません。

マスクをつけていること自体が気になる

普段、顔には何もつけずに眠っていた方が、突然マスクをつければ、

「顔に何か触れている」
「締めつけられている感じがする」
「寝返りを打つのが心配」と感じるのは自然な反応です。

特に、「この状態で朝まで寝なければ」と意識しすぎるほど、マスクへ注意が向いて寝つきにくくなることがあります。

空気の圧に慣れていない

CPAPは、空気の力で睡眠中に狭くなる気道を広げ、無呼吸を防ぐ治療です。

しかし使い始めは、
「空気がどんどん入ってくる」
「息を吐きにくい気がする」という違和感を感じる場合があります。

機種によっては、入眠時に低めの圧から徐々に上げるランプ機能や、息を吐くときの圧を軽減する機能があります。
こうした機能が適しているかは、使用している機種や治療設定によって異なります。

設定を自己判断で大きく変更するのではなく、つらい場合には医療機関へ相談してください。

マスクから空気が漏れている

「シューシューという音が気になる」
「目のあたりに風が当たる」
「マスクを強く締めないと漏れる」

という場合は、リーク(空気漏れ)が睡眠を妨げている可能性があります。

マスクは、強く締めればよいわけではありません。
サイズ、位置、形、寝姿勢などによって漏れ方が変わるため、適切に調整することが大切です。

鼻づまりや乾燥がある

鼻が乾く、口がカラカラになる、鼻が詰まって息苦しい――。

こうした症状もCPAPを続けにくくする原因です。
鼻や口の乾燥、CPAPに伴う鼻炎などがある場合には加温加湿を検討し、鼻炎や鼻閉についても評価するよう推奨しています。

この問題については、シリーズの別の記事で詳しく取り上げます。


まずは「起きている時間」にCPAPと仲良くなる

「マスクをつけた瞬間に眠らなければ」
と考える必要はありません。

どうしても違和感が強い方では、眠る前に、起きている状態で短時間マスクに慣れる方法があります。

例えば、
テレビを見ているときにマスクだけを数分つけてみる
→ 慣れたら装置につないで空気を流してみる
→ 次に横になった状態で試してみる
→ 最終的に就寝時の使用へつなげる

というように、段階を分けます。

これは「CPAP脱感作(desensitization)」あるいは段階的曝露と呼ばれる考え方で、CPAPに対する不安や閉塞感が強い方への方法として報告されています。
大規模試験による確立した標準手順があるわけではありませんが、いきなり一晩中を目標にするのではなく、負担の少ない段階から慣らすという方法は臨床でも利用されています。

ただし、これは「毎晩短時間だけ使えば十分」という意味ではありません。
最終的な目標は、眠っている時間にCPAPをできるだけ継続して使用することです。

短時間の練習は、そのための「助走」と考えてください。


「一晩中できなかった」より、「何がつらかったか」を確認しましょう

CPAPを始めた直後に、

「昨日は2時間しかできなかった」
「また途中で外してしまった」と落ち込む必要はありません。

むしろ私たちが知りたいのは、
なぜ外したくなったのか
です。

「鼻が痛かった」
「息を吐きにくかった」
「風が目に当たった」
「口が乾いた」
「圧迫感が怖かった」
「理由は分からないが、朝には外れていた」

原因によって対応が違います。

現在のCPAPでは使用時間だけでなく、AHI、リーク、圧などのデータを確認できる場合があります。
CPAPの効果を装置のデータだけで判断するのではなく、患者さんの症状や使い心地と合わせて評価する重要性が示されています。

「使えなかったこと」を隠す必要はありません。

うまく使えなかった夜こそ、調整のヒントがあります。


CPAPが眠りにくいときに見直したい5つのポイント

1.マスクの位置・サイズ・締め方

痛いほど締めつけていないか。
鼻や頬に強く当たっていないか。
自分の顔に合ったサイズか。

マスクには複数の形があります。合わないマスクを我慢し続けるのではなく、変更を検討できる場合もあります。
適切なマスク選択は、リークや不快感を減らすうえで重要です。

2.空気漏れ(リーク)

寝返りをすると漏れる、音が気になる、目に風が当たるといった場合は、装着位置やフィッティングを確認します。

3.圧の感じ方

「空気が強すぎる」「息を吐きにくい」と感じる場合には、機器の機能や圧設定について医療スタッフへ相談してください。

4.鼻や口の乾燥・鼻づまり

加湿器の使用状況、マスクからの漏れ、口呼吸、鼻炎などを確認します。

5.CPAP以外の「眠れない原因」

すべてをCPAPのせいにしないことも大切です。

もともとの不眠、むずむず脚、生活リズムの乱れ、夜間頻尿、カフェインや飲酒などが重なっている場合もあります。
CPAPフォロー時には、装置の問題だけでなく、不眠やむずむず脚、交代勤務、睡眠習慣など、睡眠を妨げる別の要因を確認することを推奨されます。


夜中に無意識にマスクを外してしまったら?

これも導入初期にみられることがあります。

途中で目が覚めて、「またつけられそうだ」と思えれば、装着し直してみてください。
一方で、毎晩同じ時刻に外してしまう、数十分しか使用できない、外した記憶すらないという状態が続く場合には、
「意志が弱いから」
と考えるより、その時間帯にリークや圧の変化、鼻づまりなどが起きていないかを確認する方が建設的です。

初期の問題を早めに見つけて対処することは、その後のCPAP継続に重要と考えられています。


我慢するより、早めに相談してほしい症状

次のような状態が続く場合は、次回受診まで無理に我慢せずご相談ください。

  • マスクをつけると強い恐怖感や息苦しさがある
  • 鼻や顔の痛み、皮膚トラブルが続く
  • 空気漏れが多く、何度調整してもうまくいかない
  • 鼻づまりや乾燥が強く眠れない
  • 圧が強く感じられ、ほとんど使用できない
  • 毎晩すぐに外してしまう
  • CPAPを使っているのに強い眠気や熟睡感のなさが続く
  • CPAPとは関係なく、強い不眠が続いている

自己判断で治療を中断したり、設定を大きく変更したりする前に相談することが大切です。


CPAPは「使えるように調整していく治療」です

CPAPの治療効果を得るためには継続使用が重要です。

しかし、
「続けること」と「ひたすら我慢すること」は同じではありません。

マスクを見直す。
リークを減らす。
加湿を調整する。
圧の感じ方を確認する。
日中に少し練習する。

こうした小さな調整を積み重ねることで、「最初はとても無理だと思ったけれど、今では普通に使える」という状態へ進める方もいます。

CPAPを続けやすくするためには、患者さんへの教育やトラブル対応、フォローアップを治療の一部として考えることが、国内外のガイドラインでも重視されています。


まとめ|最初から100点を目指さなくて大丈夫です

CPAPを始めて、
「逆に眠れなくなった」
と感じても、すぐに治療失敗と考える必要はありません。

大切なのは、
「できなかった」ではなく、「何が邪魔をしているのか」を一つずつ探すこと。

そして、どうしても違和感が強ければ、起きている時間の短い練習から始める方法もあります。
CPAPは、患者さんが装置に合わせるだけの治療ではありません。

マスク、リーク、圧、加湿、鼻症状、睡眠そのものを確認しながら、患者さんに合わせて調整していく治療です。

最初から100点を目指さず、
「昨日より少し使いやすくする」ところから始めてみてください。

しっかり眠れることは、翌日の活動を支え、これからも元気に自分らしく暮らしていくための土台になります。


Q&A

Q1.CPAPをつけると眠れません。外して寝た方がよいですか?

CPAPは睡眠中の気道を確保する治療なので、最終的には睡眠中に継続して使用することが目標です。

ただし、強い違和感を毎晩我慢するだけでは解決しない場合があります。マスク、リーク、鼻症状、圧の感じ方などに原因がないか確認しましょう。
まったく眠れない状態が続く場合には、処方している医療機関へ相談してください。

Q2.CPAPはどのくらいで慣れますか?

慣れるまでの期間には個人差があります。「○日で必ず慣れる」とは言えません。

数日で気にならなくなる方もいれば、マスクや設定を何度か調整して徐々に使えるようになる方もいます。
期間そのものより、困っている原因を早めに見つけることが大切です。

Q3.夜中にマスクを外してしまいます。治療の意味はありませんか?

「途中で外れたから全部無駄」ということではありませんが、CPAPは使用している間に効果を発揮する治療です。
そのため、最終的には睡眠時間を通して使用できる状態を目指します。

毎晩外してしまう場合は、使用時間だけでなく、リークや圧、マスクの違和感などを確認すると原因が見つかることがあります。

Q4.圧が強くて眠れないので、自分で設定を下げてもよいですか?

自己判断で治療圧を変更することはおすすめしません。

機種によってはランプ機能や呼気時の圧を軽減する機能があり、また治療データを確認したうえで調整を検討できる場合もあります。
まず担当医療機関へご相談ください。

Q5.眠れないので睡眠薬を飲めばCPAPに慣れますか?

睡眠薬を自己判断で使用・増量してCPAPへ慣れようとすることはおすすめしません。

もともとの不眠症がある場合など、睡眠薬の適応を別に検討するケースはあります。
CPAPの違和感が原因なのか、不眠症など別の問題が重なっているのかを確認したうえで判断することが大切です。


CPAPを始めたものの、

「眠れない」
「圧が苦しい」
「マスクが気になる」
「夜中に外してしまう」

といった困りごとがあれば、「慣れるまで我慢するしかない」と考えずにご相談ください。

使用時間やAHIだけでなく、マスクからのリーク、圧の変化、鼻症状、実際の眠りやすさなどを一緒に確認することで、改善できることがあります。
横濱おなか診療所では、CPAPを「機械を渡して終わり」の治療ではなく、患者さんが無理なく続けられる方法を一緒に探していく治療として考えています。


 

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