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【前編】痔瘻(あな痔)とは?おしりから膿が出る原因・症状と肛門周囲膿瘍との関係

公開日:2026年08月12日
更新日:2026年08月12日

おしりから膿が出る、何度も腫れる…それは痔瘻かもしれません

「おしりの横が何度も腫れる」
「強く痛んだあと、膿のようなものが出ると楽になる」
「下着に黄色っぽい液や血がつくことがある」

このような症状がありながら、「普通の痔かな」と様子を見ている方はいらっしゃいませんか。
痔というと、「いぼ痔」や「切れ痔」を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、痔にはもう一つ、痔瘻(じろう)という病気があります。「あな痔」と呼ばれることもあります。

痔瘻は、いぼ痔や切れ痔とは少し仕組みが違います。
特徴的なのは、肛門の内側から皮膚まで、細菌感染によってできた小さな通り道が残ってしまうことです。

今回は、あまり知られていない痔瘻について、まず「どのような病気なのか」を中心に説明します。
治療や手術については、後編の記事で詳しくお話しします。


痔瘻(あな痔)とは?―おしりにできる「トンネル」

痔瘻を理解するときは、おしりの中に小さなトンネルができた状態と考えると分かりやすいと思います。

肛門の少し内側には、小さなくぼみがあります。
その奥には肛門腺という組織があり、何らかのきっかけでそこへ細菌が入り込むと感染を起こすことがあります。

感染によって膿がたまり、その膿が皮膚側へ向かって進むことで、肛門の内側と外側をつなぐような通り道が形成されることがあります


この通り道が残った状態が痔瘻です。

医学的には、

・肛門内部にある感染の入り口
・感染の中心となる部分
・膿が通る管
・皮膚側にできる出口

といった構造があります。

患者さんから見ると、皮膚側に小さな穴やしこりがあり、そこから膿や血の混じった液が出ているように見えることがあります。


痔瘻になる前に起こる「肛門周囲膿瘍」

痔瘻を理解するために、もう一つ知っておきたい病気があります。

それが肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)です。
簡単にいうと、肛門の周囲に細菌感染が起こり、膿がたまった状態です。

肛門周囲膿瘍になると、

・肛門の周りが急に痛くなる
・赤く腫れる
・座っているだけでも痛む
・ズキズキする
・発熱する

といった症状が出ることがあります。

膿瘍が大きくなるとかなり強い痛みになることもあります。
その後、膿瘍が自然に破れたり、医療機関で切開して膿を出したりすると、圧力が下がるため痛みが急に軽くなることがあります。

ここで、

「膿が出たから治った」
と思われる方も少なくありません。

しかし、膿が通った道がそのまま残ってしまうと、それが痔瘻になります。

つまり、

肛門周囲膿瘍=膿がたまっている急性期
痔瘻=その後に膿の通り道が残った状態

と考えると理解しやすいでしょう。


痔瘻ではどのような症状が出る?

痔瘻というと「ものすごく痛い病気」というイメージを持たれるかもしれません。

実は、痔瘻になった後は必ずしも強い痛みが続くわけではありません。
よくみられる症状としては、

・肛門の近くに小さなしこりがある
・小さな穴のような部分がある
・膿のような液が出る
・血の混じった液が出る
・下着が汚れる
・おしりが湿ってかゆい
・同じ場所が何度も腫れる

などがあります。

特に覚えておいていただきたいのが、

「腫れる→痛くなる→膿が出る→楽になる」

という経過です。

これを何度も繰り返している場合には、痔瘻が隠れている可能性があります。
皮膚側の出口が開いている間は、膿が外へ流れるため、ほとんど痛みを感じないこともあります。
ところが出口が一時的にふさがると、再び中に膿がたまり、腫れや痛みが出ます。

そのため、「今日は痛くないから治った」とは限らないのが痔瘻の特徴です。


なぜ痔瘻ができるの?

痔瘻の多くは、肛門の内側にある小さなくぼみから細菌が入り込み、肛門腺に感染することから始まります。

これを「肛門腺感染」と考えます。

下痢などによって便が液状になると、肛門の小さなくぼみに入り込みやすくなるため、感染のきっかけになる場合があります。
ただし、「下痢をしたら必ず痔瘻になる」というわけではありません。
体の構造や感染の起こり方など、複数の要素が関係しています。


「おしりが不潔だから」ではありません

患者さんから、
「ちゃんと洗っていなかったからですか?」
「自分が不潔だったのでしょうか?」

と質問されることがあります。

しかし、一般的な痔瘻は、単純におしりが不潔だから起こる病気ではありません。
肛門内部の構造を通じて細菌感染が起こることが原因です。

むしろ、おしりが気になって強くこすったり、石けんで何度も洗ったりすると、皮膚が荒れてしまうことがあります。
必要以上に自分を責めたり、洗いすぎたりする必要はありません。

クローン病などが背景にある場合も

多くの痔瘻は一般的な肛門腺の感染によって起こります。
一方で、痔瘻の中には腸の病気が背景にある場合があります。

代表的なのがクローン病です。
クローン病は、消化管に慢性的な炎症が起こる病気で、肛門周囲に痔瘻や膿瘍をつくることがあります。

特に、
・若い頃から痔瘻を繰り返している
・複数の痔瘻がある
・複雑な痔瘻がある
・下痢や腹痛が続いている
・体重が減ってきた

といった場合には、必要に応じて腸の状態も確認します。

ただし、痔瘻があるからといってクローン病というわけではありません。

症状や経過を合わせて判断します。


痔瘻は自然に治る?

ここも患者さんからよく聞かれるところです。

一度しっかりした痔瘻の通り道が形成されると、自然に完全に治ることは通常期待しにくいとされています。

皮膚側の穴が一時的に閉じ、
「膿が出なくなった」
「痛みがなくなった」
ということはあります。

しかし、内部のトンネルが残っていれば、再び感染を起こして腫れることがあります。
軟膏や抗菌薬によって炎症や症状が軽くなる場合もありますが、完成した瘻管そのものを薬だけでなくすことは困難です。
そのため、痔瘻と診断された場合には、その場所や深さなどを確認しながら治療方法を検討します。

具体的な治療については、後編の「痔瘻の治療・手術」の記事で詳しく説明します。


どのようなときに受診した方がよい?

おしりの症状は、
「恥ずかしい」
「診察が痛そう」
「そのうち治るのではないか」
と受診をためらいやすい症状です。

ただ、次のような場合は、一度肛門外科などで確認しておくことをおすすめします。

・同じ場所が何度も腫れる
・膿や血の混じった液が繰り返し出る
・肛門近くの小さな穴やしこりが治らない
・腫れて痛くなり、膿が出ると楽になることを繰り返す
・おしりの症状とともに下痢や腹痛が続いている

特に、急に肛門周囲が強く痛み、腫れや発熱を伴う場合には、肛門周囲膿瘍の可能性があります。
膿がたまっている場合には、早めに膿を外へ出す処置が必要になることがあります。

強い痛みを我慢しながら市販の痔の薬だけで長く様子を見ず、医療機関へ相談してください。


横濱おなか診療所で相談できること

横濱おなか診療所では、肛門の痛み、腫れ、出血、膿、違和感などを肛門外科の視点から診察しています。

「痔瘻かどうか分からない」
「ただのできものかもしれない」
という段階でも構いません。

まず、いつ頃から症状があるのか、何度くらい腫れたのか、膿が出たことがあるかなどをお伺いします。
その後、できるだけ負担に配慮しながら肛門周囲を診察します。

痔瘻が疑われる場合には、瘻管の位置や複雑さを確認し、当院で対応できる状態か、専門的な手術が必要かを判断します。
必要に応じて、連携する専門医療機関へご紹介することもあります。

肛門外科の診療について詳しくはこちら
https://yokohama-onaka.com/medical/medical02.html


まとめ

痔瘻は「あな痔」とも呼ばれ、肛門の内側から皮膚へ感染による通り道ができる病気です。
その前段階として肛門周囲膿瘍を起こし、

腫れる→痛む→膿が出る→楽になる

という経過をたどることがあります。
特に大切なのは、膿が出て痛みがなくなっても、痔瘻そのものが治ったとは限らないということです。

同じ場所が何度も腫れる、膿が繰り返し出る、小さな穴やしこりが残っている場合には、一度肛門外科で相談してみてください。
痔瘻と診断された場合に、どのような治療を行うのかについては、後編で詳しく説明します。

痔瘻はどう治療する?手術方法やシートン法について詳しくはこちら

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https://yokohama-onaka.com/blog/


Q&A

Q1.おしりから膿が出たら痔瘻ですか?

膿が出るだけで痔瘻と断定することはできませんが、重要なサインの一つです。
特に、同じ場所が何度も腫れ、「痛くなったあと膿が出ると楽になる」という経過を繰り返す場合には痔瘻を疑います。
皮膚のできものなど別の原因もあるため、診察で確認します。

Q2.痔瘻といぼ痔は同じ病気ですか?

同じ「痔」と呼ばれますが、病気の仕組みは異なります。
いぼ痔は肛門周囲の血管や支持組織が関係する病気ですが、痔瘻は細菌感染によって肛門内部と皮膚の間に通り道が形成される病気です。
そのため、治療方法も異なります。

Q3.膿が出て痛みがなくなったら様子を見てもよいですか?

一度痛みがなくなっても、何度も同じ症状を繰り返す場合は一度診察を受けることをおすすめします。
肛門周囲膿瘍が破れて膿が出ると痛みは軽くなりますが、内部に瘻管が残っている場合があります。

Q4.痔瘻は清潔にすれば治りますか?

清潔を保つことは大切ですが、それだけで完成した痔瘻を治すことは困難です。
また、過度に洗ったり強くこすったりすると皮膚を傷めることがあります。通常の入浴やシャワー程度で十分です。

Q5.痔瘻があると大腸の病気も疑いますか?

すべての方に腸の病気があるわけではありません。
ただし、多発する痔瘻や複雑な痔瘻、慢性的な下痢や腹痛、体重減少などがある場合には、クローン病などを確認するため大腸内視鏡検査などを検討することがあります。

 

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