「緊張するとお腹がゆるくなる」…
公開日:2026年08月02日
更新日:2026年07月29日

目次
「水のようなしゃばしゃばした便が何日も続いている」
「食事をすると、すぐトイレに行きたくなる」
「下痢止めを飲むと一時的によくなるけれど、また繰り返す」
このような症状があると、「年齢のせいだろうか」「大腸に悪い病気があるのでは」と不安になる方もいらっしゃると思います。
まずお伝えしたいのは、しゃばしゃば便が出たからといって、すぐに重い病気と決まるわけではないということです。
食べ物や薬、一時的な胃腸炎など、比較的身近な原因でも起こります。
一方で、何週間も続く慢性下痢や、血便、体重減少、夜中に目が覚めるほどの下痢は、体からのSOSサインであることがあります。
とくに60~80代の方では、薬の影響や脱水、大腸の炎症なども含めて考えることが大切です。
今回は、しゃばしゃば便が起こる原因、自宅でできる対策、受診の目安、大腸カメラの役割について、順番にお話しします。

しゃばしゃば便が続くとき、まず知っておきたいこと
下痢には、大きく分けて「急に始まって短期間で治る下痢」と「長く続く下痢」があります。
急に始まった下痢の多くは、ウイルス性胃腸炎、食あたり、食べすぎ、飲みすぎなどによるものです。
体調がよく、水分が取れていて、数日以内に改善している場合は、慌てず様子を見られることもあります。
一方、医学的には、軟らかい便や水のような便が4週間以上続く、または繰り返す状態を慢性下痢症と考えます。
日本の「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性下痢症」でも、慢性下痢の定義、警告症状、血液・便検査、内視鏡検査の意義が取り上げられています。
ただし、4週間たつまで受診を待つ必要はありません。
年齢、便の回数、体力の低下、血便や発熱の有無などによっては、数日から1~2週間程度でも一度相談した方がよい場合があります。
「しゃばしゃば便」は腸で何が起きている状態?
私たちが食べたものは、小腸から大腸へと進み、その途中で栄養や水分が吸収されます。
大腸は、便に含まれる水分を調整する「水分調整所」のような役割をしています。
ところが、腸の動きが速すぎたり、腸の粘膜に炎症が起きたりすると、水分を十分に吸収する前に便が出口へ運ばれてしまいます。
その結果、形のないしゃばしゃばした便になります。
また、腸の中に吸収されにくい糖分や塩類が多く残ると、水分が腸内へ引き込まれ、便が水っぽくなることもあります。
便の回数だけでなく、次のような変化も確認してみましょう。
- 夜中にも便意で目が覚める
- 食後すぐにトイレへ行きたくなる
- 便を我慢しにくくなった
- 腹痛やお腹の張りを伴う
- 血液や粘液が混じる
- 下痢と便秘を繰り返す
- 食欲や体重が低下している
こうした情報は、原因を考える大切な手がかりになります。
慢性下痢を起こす主な原因
薬やサプリメントの影響
シニア世代の慢性下痢で、まず確認したいのが服用中の薬です。
例えば、酸化マグネシウムなどの便を軟らかくする薬、抗菌薬、一部の糖尿病治療薬、胃薬、痛み止め、健康食品やサプリメントなどが下痢に関係することがあります。
「何年も同じ薬を飲んでいるから関係ない」とは限りません。
年齢とともに腎臓の働きや薬の代謝が変化したり、別の薬が追加されたりすることで、以前は問題がなかった薬が影響する場合もあります。
診察を受けるときは、お薬手帳だけでなく、市販薬やサプリメントの名前も分かるようにしておくと役立ちます。
ただし、自己判断で処方薬を中止すると、もともとの病気が悪化する可能性があります。
薬の変更や中止は、処方した医師や薬剤師に相談してください。
食事や飲み物の影響
牛乳や乳製品を取った後に下痢が起こる場合は、乳糖を消化する力が低下している可能性があります。年齢を重ねてから、以前は平気だった牛乳でお腹が緩くなる方もいます。
また、次のようなものも、摂取量によっては下痢を悪化させます。
- アルコール
- 脂っこい料理
- コーヒーなどカフェインの多い飲み物
- 果物や果汁の取りすぎ
- 人工甘味料や糖アルコールを含む食品
- 冷たい飲み物の一気飲み
特定の食品を極端に制限する必要はありません。まずは、食べたものと症状の関係を数日間記録すると、原因を見つけやすくなります。
過敏性腸症候群や機能性下痢
検査で大きな異常が見つからなくても、腸の動きや知覚が敏感になり、下痢を繰り返すことがあります。
腹痛を伴い、排便すると少し楽になる場合は、下痢型の過敏性腸症候群が考えられます。
一方、腹痛は目立たず、軟便や水様便が続く場合は、機能性下痢と呼ばれる状態もあります。
ただし、高齢になってから初めて下痢が始まった場合や、体重減少、貧血、血便などがある場合は、最初から「体質」や「ストレス」と決めつけないことが大切です。ほかの病気を確認したうえで判断します。
大腸の炎症や感染症
潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸の粘膜に炎症が起きる病気では、下痢、腹痛、血便、発熱などが現れることがあります。
また、抗菌薬を飲んだ後に腸内細菌のバランスが大きく崩れ、特定の細菌が増えて下痢が続く場合もあります。
シニア世代で注意したいものに、顕微鏡的大腸炎があります。
これは水のような下痢が長く続く病気ですが、大腸カメラで見た粘膜がほぼ正常に見えることがあります。
そのため、疑われる場合は粘膜の一部を採取する「生検」を行い、顕微鏡で炎症を確認します。
慢性下痢では、見た目に異常がなくても複数箇所から生検を行うことが診断に役立つ場合があります。
胆汁酸や消化吸収に関係する下痢
胆のうを摘出した後や、腸の一部を手術した後などに、胆汁酸という消化液が大腸へ多く流れ込み、水のような便が続くことがあります。
また、すい臓や小腸の働きが低下し、脂肪や栄養を十分に吸収できなくなると、便が水っぽくなったり、脂っぽくなったりすることがあります。
便が水に浮く、油が浮く、流れにくい、体重が減るといった変化がある場合は、診察時にお伝えください。
大腸がんなど、確認が必要な病気
大腸がんの代表的な症状は血便や便通の変化ですが、下痢と便秘を繰り返す、急に便が細くなる、残便感が続くといった形で現れることもあります。
しゃばしゃば便だけで大腸がんと決まるわけではありません。
しかし、以前は便通に問題がなかった方に新しい変化が現れた場合や、血便、貧血、体重減少を伴う場合は、一度確認することが大切です。

まず自宅でできる対策
下痢のときに最も大切なのは、脱水を防ぐことです。
水やお茶だけでなく、必要に応じて経口補水液、みそ汁、スープなども利用し、水分と塩分を少しずつ補いましょう。
一度に大量に飲むより、少量をこまめに飲む方が負担を抑えられます。
食欲がある場合は、無理に絶食する必要はありません。
おかゆ、うどん、やわらかく煮た野菜、豆腐、白身魚などを、少量ずつ食べてください。
まず一つ始めるなら、次の内容を3~7日程度記録してみましょう。
- 便が出た時刻と回数
- 便の色や水っぽさ
- 食べたもの
- 腹痛、発熱、血便の有無
- 服用した薬
- 夜間に便意で目が覚めたか
便の写真をスマートフォンで撮っておくことも、診察時の参考になります。

下痢止めを自己判断で使い続けないでください
市販の下痢止めが役立つ場合もありますが、すべての下痢に適しているわけではありません。
高熱や血便を伴う感染性腸炎では、腸の動きを強く止める薬が適さない場合があります。
また、薬で症状だけを抑え続けると、原因となっている病気の発見が遅れる可能性もあります。
数日使用しても改善しない場合や、何度も繰り返し必要になる場合は、漫然と飲み続けずに医療機関へ相談してください。
様子を見られる場合と医療機関を受診する目安
自宅で様子を見られることがある場合
次の条件がそろっている場合は、水分を補いながら短期間様子を見られることがあります。
- 下痢が始まって1~2日程度
- 症状が軽く、徐々に改善している
- 水分や食事を取れている
- 血便や黒い便がない
- 強い腹痛や高熱がない
- 食べすぎや飲みすぎなどに心当たりがある
ただし、ご高齢の方や心臓病・腎臓病などの持病がある方は、軽い下痢でも体調を崩しやすいため、早めにかかりつけ医へ相談してください。
通常の診療時間内に相談した方がよい場合
次のような場合は、消化器内科への相談をおすすめします。
- 下痢が1~2週間以上続く
- 一度治っても何度も繰り返す
- 夜中にも下痢で目が覚める
- 日常生活や外出に支障がある
- 下痢と便秘を繰り返す
- 食欲低下や体重減少がある
- 新しい薬を始めてから下痢が続く
- 市販薬を使っても改善しない
- 以前と明らかに便通が変わった
慢性下痢の基準は4週間以上が一つの目安ですが、心配な症状がある場合は4週間を待つ必要はありません。
早めの受診や緊急相談を検討する場合
次の症状がある場合は、診療時間外も含め、早めに医療機関や救急相談へ連絡してください。
- 赤い血が多く混じる便
- 真っ黒な便
- 我慢できないほどの腹痛
- 繰り返す嘔吐
- 高い発熱
- 水分が取れない
- 尿がほとんど出ない
- 強い口の渇き、ふらつき、意識がぼんやりする
- 急激にぐったりしてきた
これらは、強い炎症、出血、脱水などを示すことがあります。

医療機関では何を調べる?
慢性下痢の診察では、まず症状が始まった時期、便の回数や形、食事、服用薬、過去の病気、手術歴などを確認します。
「便のことをうまく説明できない」と心配しなくても大丈夫です。
いつから、1日に何回くらい、どのような便が出ているかを、分かる範囲でお話しください。
必要に応じて、次のような検査を組み合わせます。
- 血液検査:炎症、貧血、脱水、甲状腺、肝臓・腎臓などを確認
- 便検査:出血、感染症、腸の炎症などを確認
- 腹部超音波やCT:腸や周囲の臓器を確認
- 大腸カメラ:大腸の粘膜を直接観察し、必要に応じて組織を採取
すべての方に同じ検査を行うわけではありません。
問診や診察から、薬の調整や食事の見直し、経過観察を先に行う場合もあります。
下痢の原因を調べる際には、便の状態、食事、処方薬や市販薬、持病などの確認に加え、便検査、血液検査、必要に応じた内視鏡検査が用いられます。

慢性下痢で大腸カメラが重要な理由
「下痢なのに、なぜ大腸カメラが必要なのですか」と質問されることがあります。
大腸カメラは、大腸がんやポリープを探すだけの検査ではありません。
大腸の粘膜に炎症がないか、出血している場所がないか、潰瘍や狭窄がないかを直接確認できます。
さらに、必要に応じて粘膜を少量採取し、顕微鏡で調べることができます。
とくに顕微鏡的大腸炎などは、カメラで見ただけでは粘膜が正常に見える場合があります。
そのため、慢性下痢では、大腸カメラと生検を組み合わせることが重要になる場合があります。
国内の慢性下痢症診療ガイドラインでも、警告症状、臨床検査とともに、鑑別診断における内視鏡検査の意義が検討されています。
海外の診療指針でも、慢性下痢に対する下部消化管の評価として、大腸カメラと生検が重視されています。
ただし、しゃばしゃば便が一度出ただけで、すぐに大腸カメラが必要になるわけではありません。
年齢、症状の期間、血便、夜間の下痢、体重減少、貧血、便検査の結果などを踏まえ、検査の必要性を相談して決めます。
まとめ
しゃばしゃばした便は、食事、飲酒、薬、一時的な胃腸炎など、比較的よくある原因でも起こります。
一方で、下痢が長く続く場合には、過敏性腸症候群、薬剤性下痢、大腸の炎症、顕微鏡的大腸炎、胆汁酸に関係する下痢など、さまざまな原因を考える必要があります。
まずは水分を少しずつ補い、便の回数、食事、服用薬などを記録してみてください。
下痢が1~2週間以上続く、夜中にも下痢がある、血便や体重減少を伴う、これまでと便通が大きく変わったという場合は、「年齢のせい」「お腹が弱いだけ」と決めつけず、消化器内科へご相談ください。
大腸カメラが必要かどうかも、症状や検査結果を確認したうえで一緒に考えていきます。
Q&A
Q1.しゃばしゃば便は何日続いたら受診すべきですか?
数日で改善しない場合や、1~2週間以上続く場合は、一度相談することをおすすめします。
慢性下痢は4週間以上続く状態が一つの基準ですが、血便、発熱、体重減少、夜間の下痢などがあれば、期間にかかわらず早めの受診が必要です。
ご高齢の方は脱水になりやすいため、食事や水分が十分に取れない場合も早めに相談してください。
Q2.しゃばしゃば便では何科を受診すればよいですか?
まずは消化器内科が適しています。
薬の副作用が疑われる場合は、処方した医師への相談も大切です。かかりつけ医がいる場合は、最初にそちらへ相談しても構いません。
症状や検査結果によっては、大腸カメラが行える医療機関や、より専門的な医療機関を紹介する場合があります。
Q3.慢性下痢では必ず大腸カメラを受けますか?
すべての方に大腸カメラが必要なわけではありません。
症状の期間、年齢、血便や体重減少の有無、血液検査や便検査の結果などをもとに判断します。
ただし、慢性下痢の原因には、粘膜を直接見たり、組織を採取したりしなければ分かりにくい病気があります。必要性が高いと考えられる場合には、検査の利点と注意点をご説明したうえで相談します。
Q4.市販の下痢止めで様子を見てもよいですか?
軽く一時的な下痢では使用できる場合がありますが、長期間の自己使用は避けましょう。
血便、高熱、強い腹痛がある場合は、腸の動きを止める薬が適さないことがあります。
市販薬を数日使用しても改善しない場合や、何度も薬が必要になる場合は、原因を調べるために医療機関へ相談してください。
Q5.牛乳やヨーグルトは下痢のときも取った方がよいですか?
下痢の最中は、牛乳や乳製品で症状が悪化する方もいます。
一時的に乳糖を消化しにくくなっている場合があるため、飲んだ後に便が緩くなる方は、いったん量を減らして様子を見てください。
ヨーグルトや乳酸菌がすべての下痢に有効とは限りません。特定の食品だけに頼らず、水分補給と原因の確認を優先しましょう。
しゃばしゃばした便が続くときや、受診した方がよいか判断に迷うときは、無理に自己判断を続けず、一度ご相談ください。
横濱おなか診療所では、下痢の回数だけでなく、症状が始まった時期、食事、服用中の薬、体重変化、生活への影響などを確認しながら、必要な検査や対策を一緒に考えます。
大腸カメラについても、すべての方に一律に勧めるのではなく、血液検査や便検査、症状の経過などを踏まえて必要性をご説明します。
症状をうまく説明できない場合も、そのままお話しいただいて構いません。お薬手帳や便の記録、便の写真などがある場合は、診察時にお持ちください。
横濱おなか診療所
https://yokohama-onaka.com









