「自由診療に興味はあるけれど、…
公開日:2026年08月05日
更新日:2026年08月05日

目次
「年齢のせい」と思っている不調に亜鉛不足が隠れていることがあります
「以前より疲れやすくなった」
「小さな傷や口内炎がなかなか治らない」
「風邪をひきやすくなった気がする」
「食事の味を薄く感じる」
50代以降になると、こうした変化を「年齢だから仕方がない」と受け止めている方も多いのではないでしょうか。
もちろん、疲れやすさや体調不良には、睡眠不足、貧血、甲状腺の病気、糖尿病、心臓や肺の病気など、さまざまな原因があります。
しかし、その一つとして見落とされやすいのが亜鉛不足です。
亜鉛は味覚に関係する栄養素として知られていますが、実際には、免疫、皮膚や粘膜の修復、タンパク質の合成、細胞分裂など、全身の多くの働きを支えています。
高齢者の亜鉛不足では、傷の治りが遅くなることも報告されています。
今回は、亜鉛不足のサインとともに、亜鉛と腸のバリア機能、いわゆる「リーキーガット」、脳腸相関との関係を分かりやすくお話しします。

亜鉛は味覚だけでなく全身の修理を支える栄養素です
亜鉛は、私たちの体内で作ることができない必須ミネラルです。
体内では、数百種類の酵素の働きや、タンパク質・DNAの合成、免疫細胞の働き、傷の修復、味覚の維持などに関係しています。
いわば、体のあちこちで働く**「修理工場の工具」**のような存在です。
工具が足りなくなると、すぐに体が動かなくなるわけではありません。しかし、細胞の入れ替わりや傷の修復が少しずつ滞り、さまざまな不調として現れることがあります。講義でも、亜鉛は味覚、免疫、創傷治癒、抗酸化作用、消化管上皮の保護などに広く関係すると説明されていました。
亜鉛不足でみられることがあるサイン
亜鉛不足では、次のような変化がみられることがあります。
- 味やにおいが分かりにくい
- 食欲が落ちた
- 皮膚が荒れやすい
- 傷や口内炎が治りにくい
- 髪が抜けやすい
- 感染症を繰り返しやすい
- 何となく元気が出ない
ただし、これらは亜鉛不足だけに特有の症状ではありません。「疲れるから亜鉛不足」とは断定できず、症状や食事、持病、服薬、血液検査を合わせて判断する必要があります。
また、一般に血清亜鉛値が測定に使われますが、採血時間、感染や炎症、年齢、栄養状態などの影響を受けます。
数値だけでなく、症状や不足しやすい背景を一緒に確認することが大切です。

腸は栄養を取り込む入口であり、異物を防ぐ城壁でもあります
食べ物に含まれる亜鉛は、主に小腸から吸収されます。
ところが腸には、栄養を取り込むだけでなく、細菌や有害な物質を体内へ入れないという、もう一つの大切な役割があります。
腸の表面を「城壁」に例えると分かりやすいかもしれません。
城壁の表面には粘液があり、その周囲には腸内細菌が暮らしています。
さらに、抗菌物質や免疫細胞が異物を見張り、腸の細胞同士は隙間ができないようにつながっています。
腸管バリアは、主に次の4つで守られています。
- 腸の上皮細胞による物理的な壁
- 粘液や抗菌物質による化学的な防御
- 常在菌による微生物学的な防御
- 免疫細胞による防御
そして亜鉛は、この複数の仕組みに関係しています。
タイトジャンクションは腸の細胞をつなぐ「目地」
腸の上皮細胞同士は、タイトジャンクションという構造でつながっています。
タイル張りの壁を想像してみてください。タイルそのものが腸の細胞で、タイルの間を埋める目地がタイトジャンクションです。目地がしっかりしていれば、水や汚れは裏側へ入り込みません。
亜鉛は、タイトジャンクションを構成するタンパク質や、腸上皮の修復に関係しています。細胞や動物を使った研究では、亜鉛不足や亜鉛輸送の障害によってタイトジャンクションの構造・機能が低下し、腸管透過性が高まることが示されています。
リーキーガットとは何を意味する言葉?
リーキーガットは、直訳すると「漏れやすい腸」という意味です。医学的には、腸管バリアが弱まり、腸の中の物質が通常より通過しやすくなった腸管透過性亢進を指して使われることがあります。
ただし、リーキーガットは、それだけで疲労や多くの病気を説明できる独立した診断名ではありません。
インターネット上では幅広い症状と結びつけられることがありますが、検査方法や臨床的な意味が確立していない部分もあります。
極端な除去食や高額な検査・サプリメントを自己判断で始めないことが大切です。

亜鉛不足と腸の不調は悪循環をつくります
亜鉛が不足すると、腸の上皮細胞やタイトジャンクションの維持、抗菌物質の分泌、免疫調節などに影響する可能性があります。
さらに、腸内細菌叢のバランスが乱れ、短鎖脂肪酸などの有用な代謝物が減ると、腸管バリアが弱まりやすくなります。
短鎖脂肪酸は腸の細胞のエネルギー源になり、粘膜の維持にも関係する物質です。
一方で、慢性的な下痢や腸の炎症、吸収不良があると、食べ物から摂取した亜鉛を十分に吸収できないことがあります。
つまり、
亜鉛不足
→ 腸のバリアが弱る
→ 炎症や腸内環境の乱れ
→ 亜鉛を吸収しにくくなる
→ さらに亜鉛不足
という悪循環が起こり得ます。講義でも、亜鉛不足、腸内細菌の多様性低下、短鎖脂肪酸の減少、腸管バリア低下が互いに影響する可能性が示されていました。
炎症性腸疾患などの消化器疾患では、摂取不足、吸収低下、炎症などが重なり、亜鉛不足が起こりやすいことが知られています。

腸と脳は互いに情報をやり取りしています
「脳腸相関」とは、脳と腸が神経、ホルモン、免疫、腸内細菌由来の物質などを介して、双方向に影響し合う仕組みです。
たとえば、緊張するとお腹が痛くなったり、強いストレスが続くと便通が乱れたりするのは、脳から腸への影響の一例です。
反対に、腸の炎症や腸内環境の変化が、体調や気分に関係する可能性も研究されています。
亜鉛は神経機能、免疫、腸管バリアに関係するため、脳腸相関を支える栄養素の一つと考えられます。
ただし、「疲れや気分の落ち込みはリーキーガットや亜鉛不足が原因」と単純に決めつけることはできません。
疲労が長引く場合には、腸だけでなく、貧血、甲状腺機能、血糖、肝臓や腎臓の状態、睡眠、薬の影響なども含めて確認する必要があります。
中高年・シニア世代が亜鉛不足になりやすい理由
年齢を重ねると、食事量が減ったり、肉や魚を避けるようになったりして、亜鉛の摂取量が少なくなることがあります。
歯や入れ歯の問題で硬い食品を食べにくい方、独居で食事が単調になっている方も注意が必要です。
また、慢性の下痢、潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸疾患、消化管手術後、過度の飲酒も亜鉛不足につながることがあります。
糖尿病や腎臓病などの持病がある方、多くの薬を服用している方では、病気や薬が栄養状態に影響していないかを個別に確認します。
まずは毎日の食事を振り返りましょう
亜鉛は、牡蠣などの魚介類、肉、魚、卵、乳製品、豆類、ナッツ類などに含まれています。
牡蠣だけを大量に食べる必要はありません。毎食で主菜がほとんどなく、おにぎり、パン、麺類だけで済ませることが多い方は、まず卵、魚、肉、豆腐などを一品加えてみましょう。
「まず一つ変えるなら」、朝食や昼食にタンパク質を含む食品を一品加えることをおすすめします。
ただし、腎臓病などでタンパク質やミネラルの制限を受けている方は、自己判断で食事内容を大きく変えず、主治医や管理栄養士にご相談ください。
亜鉛サプリメントは多く飲めばよいわけではありません
亜鉛不足が心配でも、最初から高用量のサプリメントを長期間飲み続けることはおすすめできません。
亜鉛を過剰に摂ると、吐き気や腹部症状が起こるほか、銅の吸収が妨げられ、銅欠乏による貧血や神経症状につながることがあります。50mg以上の亜鉛を数週間摂取すると、銅吸収や免疫機能に影響する可能性があります。
複数のサプリメントを使用している場合、知らないうちに亜鉛の合計量が多くなっていることもあります。治療が必要な亜鉛欠乏症では、血液検査や症状を確認しながら、医師が補充量と期間を判断します。
医療機関に相談した方がよい目安
食生活に心当たりがあり、症状が軽く一時的であれば、まず食事と休養を見直して経過を見ることもできます。
一方、次のような場合は、通常の診療時間内に内科や消化器内科へ相談してください。
- 疲れや食欲低下が数週間続く
- 味覚・嗅覚の変化が続いている
- 傷、口内炎、皮膚炎が治りにくい
- 慢性的な下痢や便通の変化がある
- 体重が意図せず減っている
- 市販のサプリメントを飲んでも改善しない
- 持病がある、または多くの薬を服用している
急な息苦しさ、胸の痛み、意識の変化、黒い便や大量の出血、高熱や強い脱水などがある場合は、亜鉛不足の問題とは分けて、早めの医療相談が必要です。

病院ではどのようなことを確認する?
診察では、食事内容、体重変化、便通、飲酒、持病、薬やサプリメントの使用状況などを確認します。
必要に応じて、血清亜鉛のほか、血算、鉄、アルブミン、肝機能、腎機能、血糖、甲状腺機能などを調べます。亜鉛を補充する場合には、銅も合わせて確認することがあります。
下痢、腹痛、血便、体重減少などがある場合には、症状に応じて便検査、腹部超音波、胃カメラや大腸カメラなどを相談します。すべての方に同じ検査を行うわけではなく、症状や経過に合わせて必要性を判断します。
まとめ
亜鉛は、味覚だけでなく、免疫、傷の修復、皮膚や腸粘膜の維持に関係する重要な栄養素です。
亜鉛不足によって腸管バリアが弱る可能性がある一方、腸の炎症や吸収不良があると亜鉛不足が進みやすくなります。
ただし、疲労や体調不良の原因をすべて亜鉛不足やリーキーガットに結びつけることはできません。
まずは食事を振り返り、不調が続く場合には、別の病気が隠れていないかも含めて相談することが大切です。
Q&A
Q1.疲れやすいだけでも亜鉛不足の検査を受けた方がよいですか?
疲れやすさだけで、すべての方に亜鉛検査が必要とは限りません。
食欲低下、味覚障害、皮膚炎、傷の治りにくさ、慢性下痢、偏った食事などを伴う場合には、亜鉛不足も検討します。
疲労が続く場合には、貧血、甲状腺機能、血糖、肝臓・腎臓の状態などを含めて確認することが大切です。
Q2.血清亜鉛が正常なら不足はありませんか?
正常範囲であっても、数値だけで完全に判断することはできません。
血清亜鉛は、採血時間、食事、炎症、年齢、アルブミン値などの影響を受けます。症状や食生活、不足しやすい病気の有無を合わせて評価します。
反対に、亜鉛値が低くても、炎症や低栄養など別の背景が影響している場合があります。
Q3.リーキーガットの検査を受ければ原因が分かりますか?
現在のところ、一般の方の不調を一つの検査だけで「リーキーガット」と診断できるわけではありません。
腸管透過性を調べる研究用検査はありますが、日常診療での標準的な診断方法や治療方針は十分に確立していません。
慢性の腹痛、下痢、血便、体重減少などがある場合は、まず既知の消化器疾患がないかを確認することが優先されます。
Q4.亜鉛サプリメントを飲めば風邪を予防できますか?
亜鉛サプリメントを飲めば風邪を確実に予防できるとはいえません。
亜鉛は正常な免疫機能に必要ですが、欠乏していない方が多量に摂取しても、感染症を防げるとは限りません。風邪をひいた後の亜鉛製剤についても、症状の期間をわずかに短縮する可能性はあるものの、研究結果にはばらつきがあります。
長期間の高用量摂取は銅欠乏などの原因になるため、自己判断で続けないようにしましょう。
Q5.亜鉛不足は何科に相談すればよいですか?
まずは内科で相談できます。
慢性下痢、腹痛、お腹の張り、食欲低下などがある場合は、消化器内科が適しています。皮膚症状が中心なら皮膚科、味覚障害が中心なら耳鼻咽喉科と連携することもあります。
受診時には、使用中の薬やサプリメントが分かるもの、健康診断の結果があればお持ちください。
疲れやすさ、味覚の変化、傷の治りにくさに加えて、下痢、便秘、お腹の張り、食欲低下などが続くときは、無理に自己判断を続けず、一度ご相談ください。
横濱おなか診療所では、症状だけでなく、食事、便通、体重変化、持病、薬やサプリメントの使用状況などを確認しながら、必要な検査や今後の対応を分かりやすくご説明します。
症状をうまく説明できない場合も、そのままお話しいただいて構いません。
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