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疲れやすい・足がつるのはマグネシウム不足?体を動かすエネルギーと神経・筋肉の働きを医師が解説

公開日:2026年07月29日
更新日:2026年07月26日

マグネシウムは体を内側から支える「縁の下の力持ち」です

「マグネシウムは便秘薬に入っている成分でしょうか」
「カルシウムとは違うのでしょうか」

診察室で、このようなご質問をいただくことがあります。
便秘薬として使われる酸化マグネシウムをご存じの方は多い一方で、マグネシウムが体の中で何をしているのかは、あまり知られていません。

まずお伝えしたいのは、マグネシウムは、神経、筋肉、心臓、骨、腎臓など、全身の生理機能を支える大切なミネラルだということです。

例えるなら、体という大きな工場の中で、たくさんの機械を動かすために働く「整備係」のような存在です。
目立つ成分ではありませんが、不足するとさまざまな働きが円滑に進みにくくなります。

マグネシウムは300種類を超える酵素反応に関わり、タンパク質の合成、筋肉や神経の機能、血糖や血圧の調節、エネルギー産生などを支えています。
成人の体内には約25gあり、その50~60%が骨に、残りの多くが筋肉などの軟部組織に存在します。

マグネシウムが支えている主な生理機能

体を動かすエネルギーを使える形にする

食事から糖質や脂質をとっても、それだけで体を動かせるわけではありません。
細胞では、それらをもとにATPというエネルギーの受け渡し役をつくります。

ATPは、よく「体内のエネルギー通貨」に例えられます。
ただし、ATPはマグネシウムと結び付いた状態になることで、多くの酵素に利用されやすくなります

つまりマグネシウムは、エネルギーそのものというよりも、つくられたエネルギーを体が使えるようにする手助けをしています。
講義でも、マグネシウムがATPを利用する酵素やイオン輸送体に欠かせず、エネルギー産生と利用の両方を支えることが解説されました。

神経・筋肉・心臓の働きを整える

私たちが手足を動かせるのは、神経から筋肉へ適切に信号が伝わるためです。
マグネシウムは、神経の過剰な興奮を抑えたり、筋肉の収縮と弛緩を調節したりする役割を担っています

心臓も筋肉でできており、一定のリズムで動くためには、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどの電解質が適切なバランスに保たれる必要があります。

そのため、マグネシウムが著しく不足すると、筋肉のぴくつき、けいれん、手足の震え、筋力低下、不整脈などが現れることがあります。

骨や歯、体の材料づくりを支える

骨というとカルシウムを思い浮かべる方が多いと思いますが、マグネシウムも骨の構造や強度の維持に関係しています。

さらに、DNAやRNA、タンパク質を合成するときにも必要です。
皮膚を含め、体の組織がつくられ、入れ替わっていく過程を陰から支えているミネラルと考えると分かりやすいでしょう。
例えば、マグネシウム輸送に関係する遺伝子の異常と、腎臓の電解質輸送や遺伝性魚鱗癬などの皮膚バリア障害との関連などが指摘されています。
ただし、一般的な食事不足が直ちにこれらの疾患を引き起こすという意味ではありません。

血液検査が正常でも不足していることはある?

体内のマグネシウムのうち、血液中に存在するのは1%未満です。
そのため、血清マグネシウム値が正常範囲でも、骨や細胞内の蓄えが十分とは限りません。

一方で、「血液検査が正常でも不足しているかもしれない」という理由だけで、すべての方が特別な検査やサプリメントを必要とするわけではありません。

診療では、血液検査だけでなく、食事内容、下痢の有無、飲酒量、腎機能、服用している薬、筋力低下やけいれんなどの症状を合わせて判断します。

マグネシウムが不足しやすいのはどのような方?

一般的な食生活を送っている健康な方が、突然重い欠乏症になることは多くありません。
ただし、次のような背景が重なると不足しやすくなります。

  • 豆類、野菜、海藻、魚介類、種実類をあまり食べない
  • 食事量そのものが少ない
  • 慢性的な下痢や吸収不良がある
  • 多量の飲酒が続いている
  • 利尿薬など、尿中への排泄を増やす薬を使用している
  • 胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬を長期間使用している
  • 糖尿病のコントロールが不十分である

低マグネシウム血症は、摂取不足だけでなく、腸からの吸収低下や腎臓からの排泄増加によっても起こります。
慢性下痢、アルコール使用、利尿薬、シスプラチンなどの薬剤も原因となり得ます。

薬が関係している可能性があっても、自己判断で中止するのは避けてください。
薬を続ける利益と電解質への影響を確認しながら、必要に応じて検査や処方調整を行います。

不足するとどのようなサインが現れる?

軽い不足では、はっきりした症状がないことも少なくありません。
症状が現れる場合には、食欲低下、吐き気、だるさ、筋力低下、筋肉のけいれん、震え、神経過敏などがみられます。

ただし、これらはマグネシウム不足だけに特有の症状ではありません。
疲労、睡眠不足、甲状腺疾患、貧血、薬の副作用などでも起こります。

また、マグネシウム不足では低カリウム血症や低カルシウム血症を伴うことがあります。
カリウムを補っても低値が改善しにくい場合に、マグネシウム不足が隠れていることもあります。

毎日の食事でマグネシウムを補う方法

日本人の食事摂取基準2025年版では、1日当たりの推奨量は65~74歳で男性350mg、女性280mg、75歳以上で男性330mg、女性270mgです。

数字を毎日細かく計算する必要はありません。
まずは、次の食品を食卓に少しずつ取り入れてみてください。

  • 納豆、豆腐、油揚げ、きな粉などの大豆製品
  • 枝豆、オクラ、葉物野菜
  • わかめ、ひじき、あおさなどの海藻
  • あさり、いわし、干しエビなどの魚介類
  • ごま、アーモンド、落花生などの種実類
  • 精製度の低い穀類

厚生労働省の情報でも、成人の推奨量は年齢・性別により男性330~380mg、女性280~290mg程度とされ、さまざまな食品から摂取することが基本です。

まず一つ変えるなら、朝食に納豆を加える、みそ汁にわかめや豆腐を入れる、間食の一部を少量の無塩ナッツに替えるなど、続けやすい方法がおすすめです。

サプリメントや酸化マグネシウムの注意点

「不足が心配なので、サプリメントをたくさん飲めばよい」とは限りません。
サプリメントなどから一度に多量にとると、下痢や腹痛を起こすことがあります。
通常の食品以外から摂取するマグネシウムには、成人で1日350mgという耐容上限量が設定されています。

また、便秘治療に使う酸化マグネシウムは、腸管内に水分を集めて便を軟らかくする薬です。
食事から摂るマグネシウムとは、量や目的を分けて考える必要があります。

特に高齢の方や腎機能が低下している方では、薬として摂取したマグネシウムを十分に排泄できず、高マグネシウム血症を起こすことがあります。
長期使用中の方では、必要に応じて腎機能や血清マグネシウム値を確認します。

酸化マグネシウムを服用中に、強いだるさ、吐き気、筋力低下、眠気、脈が遅い、血圧低下などがみられた場合は、早めに処方元へ相談してください。

医療機関へ相談した方がよい目安

食事の偏りが気になるだけで、症状がなく、健康診断でも異常がない場合は、まず食品の組み合わせを見直してよいでしょう。

一方、次のような場合は通常の診療時間内にご相談ください。

  • 下痢や食欲低下が長く続いている
  • 筋肉のけいれんやぴくつきを繰り返す
  • 血液検査でマグネシウム、カリウム、カルシウムの異常を指摘された
  • 利尿薬、胃酸を抑える薬、抗がん薬などを使用している
  • 酸化マグネシウムを長期間服用している
  • 腎機能の低下を指摘されている

強い動悸、意識がぼんやりする、けいれん、呼吸が苦しい、立てないほどの脱力がある場合には、早めの医療機関への相談や救急受診を検討してください。

まとめ

マグネシウムは、体の中で目立つ存在ではありません。
しかし、ATPを利用したエネルギー代謝をはじめ、神経、筋肉、心臓、骨、腎臓など、多くの生理機能を支えています。

不足を防ぐ基本は、豆類、野菜、海藻、魚介類、種実類などを組み合わせた食事です。
すべてを一度に変える必要はありません。
まずは、いつもの食事に一品加えるところから始めてみてください。

一方で、サプリメントや酸化マグネシウムは、多くとればよいものではありません。
特に高齢の方、腎機能が低下している方、複数の薬を服用している方は、自己判断で増量せず、医師や薬剤師と相談しながら使用することが大切です。


Q&A

Q1.マグネシウムをとると疲れにくくなりますか?

マグネシウム不足がある方では、補うことで体調が改善する可能性がありますが、すべての疲労に効果があるわけではありません。

マグネシウムはエネルギー代謝に関わりますが、疲労の原因には、睡眠不足、貧血、甲状腺疾患、心臓病、感染症、薬の副作用など多くのものがあります。
疲れが長く続く場合は、サプリメントだけで様子を見ず、原因を確認しましょう。

Q2.足がつるのはマグネシウム不足でしょうか?

可能性の一つではありますが、足がつるだけでマグネシウム不足とは判断できません。

脱水、運動、筋肉疲労、冷え、神経や血管の病気、薬の影響などでも起こります。
頻繁に繰り返す場合や、筋力低下、しびれ、むくみなどを伴う場合はご相談ください。

Q3.血液検査でマグネシウムを調べれば、不足が分かりますか?

血清マグネシウム値は重要な検査ですが、体内の蓄えを完全に反映するわけではありません。

血液中にあるマグネシウムは体内総量の1%未満です。
そのため、症状、食生活、下痢、腎機能、服用薬、カリウムやカルシウムの値などを合わせて判断します。

Q4.マグネシウムのサプリメントは毎日飲んでもよいですか?

持病や服用薬がなく、製品の用量を守っていても、長期使用前には医師や薬剤師へ相談するのが安心です。

サプリメントは食品よりも一度に多く摂取しやすく、下痢を起こすことがあります。
腎機能が低下している方では、体内に蓄積する可能性もあるため注意が必要です。

Q5.酸化マグネシウムを便秘薬として長く飲んでいますが、大丈夫ですか?

症状が安定していても、高齢の方や長期服用中の方では、定期的に処方内容と腎機能を見直すことが大切です。

自己判断で中止する必要はありませんが、薬が現在も必要か、量が適切か、血清マグネシウム値の測定が必要かを処方元で確認してください。
強い眠気、吐き気、筋力低下などが現れた場合は、早めに相談しましょう。


食事の偏りが気になる方、筋肉のけいれんやだるさが続く方、酸化マグネシウムを長期間服用していて心配な方は、無理に自己判断を続けずご相談ください。

横濱おなか診療所では、症状だけでなく、食事、便通、腎機能、服用している薬などを確認しながら、必要な検査や生活上の工夫を分かりやすくご説明します。
健康診断の結果やお薬手帳がある場合は、診察の参考になりますのでお持ちください。

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