「緊張するとお腹がゆるくなる」…
公開日:2026年07月25日
更新日:2026年07月25日

目次
「おならが何度も出て、仕事や外出に集中できない」
「人前で我慢すると、お腹が張って苦しくなる」
「食事を変えても治らず、何か病気ではないか心配」
このようなお悩みは、診察室でも決して珍しくありません。
においや音が気になり、周囲に相談できず、一人で悩んでいる方もいらっしゃいます。

まずお伝えしたいのは、おならが多いからといって、すぐに重い病気と決まるわけではないということです。
食べ方や食品の種類、便秘、腸の動き、緊張やストレスなどが重なっている場合も少なくありません。
一方で、症状が長く続く場合や、腹痛、下痢、便秘を繰り返す場合には、過敏性腸症候群(IBS)などが関係している可能性があります。
血便や体重減少などを伴うときには、ほかの病気がないか確認することも大切です。
この記事では、おならが増える理由、いわゆる「IBSガス型」と呼ばれる状態、低FODMAP食の進め方、治療薬、受診のタイミングについて順番にご説明します。
まず知っておきたい結論
おならは、飲み込んだ空気や、腸内細菌が食べ物を分解するときに生じたガスが体外へ出る生理的な現象です。
そのため、ある程度のおならが出ること自体は異常ではありません。
ただし、次のような状態が続く場合は、単に「ガスが多い体質」と決めつけず、一度原因を整理してみることをおすすめします。
- お腹の張りや腹痛を伴う
- 下痢や便秘を繰り返す
- 排便すると少し楽になる
- 食後や緊張したときに悪化する
- おならが気になり、外出や仕事に支障がある
- 食事を極端に制限するようになった
こうした症状には、過敏性腸症候群のほか、便秘、乳糖不耐症、食物不耐症などが関係することがあります。
なお、一般に「IBSガス型」という言葉が使われることがありますが、これは正式な医学的分類名ではありません。
IBSは便の状態によって、便秘型、下痢型、混合型、分類不能型に分けられます。
ガスや膨満感が主な悩みであっても、実際には便秘型や混合型のIBS、あるいは機能性腹部膨満症などに当てはまる場合があります。

なぜおならが増えるのでしょうか
食事と一緒に空気を飲み込んでいる
早食い、よくかまずに食べる習慣、炭酸飲料、ガム、ストロー、喫煙などは、口から飲み込む空気を増やします。
緊張しているときや、無意識に唾を何度も飲み込む癖がある方も、胃腸に空気がたまりやすくなります。食後すぐにげっぷが多く出る場合は、腸で発生したガスだけでなく、飲み込んだ空気が関係しているかもしれません。
腸内細菌が食べ物を発酵させている
私たちが食べた糖質の一部は、小腸で十分に吸収されず、大腸まで届きます。それを腸内細菌が発酵させる際に、水素やメタンなどのガスが発生します。
豆類、タマネギ、小麦製品、乳製品、一部の果物、糖アルコールを含む食品などは、人によってガスや腹部膨満感を起こしやすいことがあります。
ただし、これらは本来、栄養価のある食品でもあります。症状があるからといって、すべてを長期間避ける必要はありません。
便秘によってガスが出にくくなっている
「おならが多い」と感じていても、実際にはガスの発生量より、排出しにくさが問題になっていることがあります。
便が大腸に長くとどまると発酵が進み、ガスが増えやすくなります。
また、便がたまっているとガスの通り道が狭くなり、お腹の中を移動する感覚や張りを強く感じることがあります。
毎日排便があっても、硬い便、残便感、強くいきむ必要がある場合には、便秘が隠れていることがあります。
腸がガスを敏感に感じ取っている
過敏性腸症候群では、ガスの量が極端に多いとは限りません。
通常なら気にならない程度の腸の伸びや動きを、痛みや強い張りとして感じる「内臓知覚過敏」が関係することがあります。
さらに、脳と腸は神経やホルモンを介して影響し合っています。
仕事の緊張、睡眠不足、生活環境の変化などによって症状が強くなるのは、「気のせい」だからではありません。
ストレスが腸の動きや感覚に影響する、脳腸相関という仕組みが関係しています。

過敏性腸症候群では、どのような症状がみられますか
過敏性腸症候群は、腹痛と便通の変化が繰り返される一方で、通常の検査では症状を説明できる明らかな病変が見つからない状態です。
国際的なRome IV基準では、最近3か月間に平均して週1日以上の腹痛があり、排便との関係、便の回数の変化、便の形の変化のうち、2項目以上を伴うことなどが診断の目安とされています。
症状は少なくとも6か月前から始まっていることが条件です。
ただし、実際の診療では基準だけを機械的に当てはめるわけではありません。
例えば、おならや膨満感が中心で、はっきりした腹痛や便通異常がない場合には、機能性腹部膨満症など、IBSとは別の状態も考えます。
反対に、便秘や下痢を本人があまり意識していなくても、詳しく伺うとIBSの特徴が確認できる場合もあります。
IBS以外に考えられる病気や背景
おならが多いという症状だけで、病名を決めることはできません。
診察では、次のような背景も確認します。
乳糖不耐症などの食物不耐症
牛乳やアイスクリームなどの摂取後に、ガス、腹痛、下痢が出る場合は、乳糖を十分に分解できていない可能性があります。
また、果糖や糖アルコールなどが症状に影響する方もいます。
特定の食品との関係を確認することは大切ですが、自己判断で多くの食品を除去しすぎると、栄養の偏りにつながります。
小腸内細菌増殖症など
小腸内細菌増殖症、いわゆるSIBOでは、小腸内の細菌が増え、膨満感、ガス、腹痛、下痢などが起こることがあります。
ただし、これらの症状はIBSなどでもみられるため、症状だけでは区別できません。
必要性を検討したうえで、呼気検査などを行う場合があります。
炎症性腸疾患や大腸の病気
血便、発熱、貧血、意図しない体重減少などがある場合は、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸腫瘍など、腸に炎症や病変を生じる病気がないか確認します。
こうした病気が頻繁に見つかるという意味ではありません。
見逃さないために、症状の組み合わせを確認することが重要です。
医師は何を確認しているのでしょうか
診察では、「おならが一日に何回出るか」だけではなく、症状の全体像を確認します。
特に伺いたいのは、次のような点です。
- いつから症状が始まったか
- 食後、夕方、緊張時など、悪化しやすい時間帯
- 腹痛、張り、下痢、便秘、残便感の有無
- 排便後に症状が軽くなるか
- 牛乳、小麦製品、豆類など特定の食品との関係
- 抗菌薬などの服用後に始まったか
- 血便、発熱、体重減少、食欲低下の有無
- 服用中の薬やサプリメント
- 睡眠、仕事、学校など生活への影響
食事と症状の関係を詳しく伺うのは、原因食品を一方的に禁止するためではありません。
実際に関係している食品や食べ方を絞り込み、必要以上の制限を避けるためです。
自宅でできること
まず1~2週間、簡単な記録をつける
食べた物、食べた時間、お腹の張り、腹痛、便の状態を簡単に記録してみてください。
細かいカロリー計算は必要ありません。
「昼にパンと牛乳、夕方から張った」「会議前に腹痛とガスが強くなった」という程度で十分です。
同じ食品を食べるたびに症状が出るのか、食べる量や速さが影響しているのかが見えやすくなります。
ゆっくり食べ、炭酸飲料などを見直す
一口ごとによくかみ、食事時間を少し長くするだけでも、飲み込む空気を減らせることがあります。
炭酸飲料、ガム、飴、ストローの使用が多い方は、まず一つだけ減らしてみてください。
すべてを一度に変える必要はありません。
便秘を整える
便秘がある方では、水分、食事、運動、排便習慣を見直します。
ただし、食物繊維を急に増やすと、かえってガスや張りが強くなる場合があります。
特に豆類、ブラン、小麦ふすまなどで悪化する方は、量を少しずつ調整してください。
低FODMAP食は「ずっと除去する食事」ではありません
FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵されやすい一部の糖質をまとめた呼び方です。
高FODMAP食品には、タマネギ、ニンニク、小麦を使った一部の食品、豆類、牛乳、リンゴ、はちみつ、糖アルコールなどがあります。
低FODMAP食は、IBSに対する食事療法の中では比較的多くの研究が行われています。
日本消化器病学会のガイドラインでも、欧米の研究で症状軽減が示されている一方、日本人における受け入れやすさや有効性については、さらに検討が必要とされています。
進め方は、一般に次の3段階です。
- 症状に関係しそうな高FODMAP食品を、4~6週間を超えない範囲で一時的に減らす
- 食品群ごとに少しずつ戻し、症状との関係を確認する
- 自分が苦手な食品と量だけを調整し、できるだけ幅広い食事へ戻す
低FODMAP食は、すべての対象食品を長期間禁止する方法ではありません。制限を続けすぎると、栄養の偏りや食事への不安、腸内細菌への影響につながる可能性があります。できれば医師や管理栄養士と相談しながら進めることが望まれます。

IBSではどのような薬を使いますか
IBSの薬は、「ガスを止める薬を一種類飲めば治る」というものではありません。便秘、下痢、腹痛、張りなど、主な症状に合わせて選びます。
治療に使われることがあるのは、次のような薬です。
- 腸の動きを整える消化管運動機能調節薬
- 便の水分量を調整する高分子重合体
- 腸内環境に働きかけるプロバイオティクス
- 腹痛や腸のけいれんを和らげる薬
- 下痢型IBSに用いる5-HT3受容体拮抗薬
- 便秘に対する非刺激性下剤や分泌促進薬
- 症状や体質に応じた漢方薬
- 脳腸相関に配慮して用いる抗うつ薬など
日本消化器病学会のガイドラインでも、まず食事・生活習慣を調整し、そのうえで便通タイプや優勢症状に応じて薬を選ぶ段階的な治療が示されています。
市販の整腸薬で改善する方もいますが、効果には個人差があります。
下剤や止痢薬を漫然と使い続けると、症状の評価が難しくなることもあります。
薬やサプリメントを使用している場合は、商品名が分かるものを受診時にお持ちください。
様子を見てもよい場合と、受診した方がよい場合
自宅で様子を見られることがある場合
症状が軽く、始まって間もなく、明らかな食べ過ぎや早食いなどのきっかけがあり、食事や排便の調整によって改善している場合は、短期間様子を見られることがあります。
ただし、「必ず問題ない」という意味ではありません。症状が繰り返す場合は、記録をつけながら経過を確認してください。
通常の診療時間内に相談した方がよい場合
次のような場合は、消化器内科への相談をご検討ください。
- 数週間以上続いている、または繰り返している
- 腹痛、下痢、便秘を伴う
- 食事を極端に制限しないと生活できない
- 仕事、学校、外出、人間関係に支障がある
- 市販薬や食事調整で改善しない
- 50歳以降に初めて症状が目立つようになった
- 自分では原因を判断できず、不安が続いている
症状による困りごとは、検査数値だけでは測れません。
「病院へ行くほどではないかもしれない」と感じていても、生活への影響が大きければ相談していただいて構いません。
早めの受診を検討した方がよい症状
次の症状がある場合は、IBSと自己判断せず、早めに医療機関へご相談ください。
- 血便や黒い便
- 発熱を伴う腹痛や下痢
- 意図しない体重減少
- 貧血を指摘された
- 夜中に目が覚めるほどの腹痛や下痢
- 繰り返す嘔吐
- 急に強くなった腹痛
- お腹が著しく張り、便もガスも出ない
- 大腸がんや炎症性腸疾患の家族歴がある

痛みが非常に強い、冷や汗やふらつきがある、嘔吐を繰り返す場合には、診療時間を待たず救急医療機関や地域の救急相談をご検討ください。
病院ではどのような診察や検査をしますか
まずは問診で、症状の始まり方、食事や排便との関係、便の状態、体重の変化、服用中の薬などを確認します。その後、お腹の張りや圧痛、腸の動きなどを診察します。
必要に応じて、次のような検査を相談します。
- 貧血や炎症、甲状腺機能などを確認する血液検査
- 便潜血検査や便中の炎症を調べる検査
- 腹部超音波検査
- 腹部レントゲンやCT検査
- 大腸カメラ
- 症状に応じた呼気検査など
すべての方に大腸カメラが必要なわけではありません。
年齢、症状、家族歴、血便、体重減少、過去の検査歴などを確認し、必要性を一緒に考えます。
検査で異常が見つからないことは、「何も悪くない」「気持ちの問題」という意味ではありません。
腸の動きや感覚の過敏さを含めて、症状を和らげる方法を考えていきます。
横濱おなか診療所で大切にしていること
横濱おなか診療所では、おならや腹部膨満感だけでなく、腹痛、下痢、便秘、残便感などを含め、症状全体を伺うことを大切にしています。
ガスの症状は、診察室でも話しにくいと感じる方が少なくありません。
うまく説明しようとしなくても、「人前で困っている」「夕方になると張る」「食べることが怖くなった」など、そのままお話しいただいて構いません。
検査を一律におすすめするのではなく、年齢や経過、警告症状の有無を確認し、まず生活や食事を調整するのか、薬を試すのか、検査を行うのかを相談します。
横浜市緑区・中山駅周辺で、おならやお腹の張り、過敏性腸症候群について相談できる消化器内科をお探しの方は、無理に一人で抱え込まずご相談ください。
まとめ
- おならは生理的な現象ですが、腹痛や便通異常を伴う場合は原因の確認が必要です
- 「IBSガス型」は正式な分類名ではなく、便秘型や混合型IBS、機能性腹部膨満症などを含むことがあります
- 食事、早食い、便秘、腸の知覚過敏、ストレスなどが複数重なっている場合があります
- 低FODMAP食は短期間試し、食品を一つずつ戻して個人の苦手な食品を見つける方法です
- 血便、発熱、体重減少、貧血、強い腹痛などがある場合は、IBSと決めつけず受診してください
まずは、食事と症状、便の状態を1~2週間記録することから始めてみてください。
症状が長引く場合や、どこまで様子を見てよいか迷う場合には、消化器内科で一緒に状況を整理しましょう。
Q&A
Q1.おならが多いだけでも過敏性腸症候群なのでしょうか?
おならが多いという症状だけでは、IBSとは診断できません。
IBSでは通常、繰り返す腹痛と、下痢や便秘などの便通変化がみられます。
ガスや張りが中心で、腹痛や便通異常がほとんどない場合には、機能性腹部膨満症、便秘、食物不耐症なども考えます。
症状の回数だけでなく、排便との関係や生活への影響を含めて判断します。
Q2.低FODMAP食は自分で始めてもよいですか?
短期間、関係しそうな食品を減らして様子を見ることはできますが、厳格な除去を長期間続けることはおすすめしません。
まずは食事記録をつけ、症状との関連が強そうな食品を一つずつ確認する方法が現実的です。
複数の食品群を一度に除去すると、何が原因だったのか分からなくなることがあります。
体重減少がある方、食事量が少ない方、妊娠中の方、持病がある方は、医師や管理栄養士へ相談してから始めてください。
Q3.ガスを止める治療薬はありますか?
ガスだけを完全に止める薬というより、便秘や下痢、腸の動き、腹痛などを整える薬を選びます。
整腸薬、消化管運動機能調節薬、便通を整える薬などが使われますが、合う薬は症状によって異なります。
市販薬を試しても改善しない場合は、薬を増やし続ける前に原因を整理することが大切です。
Q4.おならや張りだけで大腸カメラは必要ですか?
すべての方に大腸カメラが必要なわけではありません。
血便、貧血、体重減少、発熱、便潜血陽性、50歳以降の新しい症状、家族歴などがある場合には、大腸の病気を確認するため検査を検討します。
警告症状がなく、症状の経過がIBSなどに合う場合には、問診や基本的な検査を行い、まず治療経過を見ることもあります。
Q5.何科を受診すればよいですか?
おならや腹部膨満感に加えて、腹痛、下痢、便秘などがある場合は、消化器内科が相談先になります。
受診時には、症状が出る時間、食事との関係、便の回数や硬さ、使用中の薬などを伝えてください。
うまく説明できない場合は、数日分の食事や症状のメモを見せていただくだけでも診療の参考になります。
おならやお腹の張りは人に相談しづらく、「我慢するしかない」と考えてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、食事や便通を少し調整することで改善する場合もあれば、過敏性腸症候群などに合わせた治療が役立つ場合もあります。
症状が続くときや、受診した方がよいか迷うときは、無理に自己判断を続けず、一度ご相談ください。
横濱おなか診療所では、横浜市緑区・中山駅周辺の皆さまが、おなら、腹部膨満感、腹痛、下痢、便秘などの症状について安心して相談できるよう、分かりやすく丁寧な診療を心がけています。
横濱おなか診療所
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