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「食べないほど痩せる」は正解? ダイエット中の低栄養と筋肉減少を考える

公開日:2026年08月24日
更新日:2026年08月23日

痩せることの先にある健康を考えるシリーズ 第2回

第1回では、体重が減った後も健康を保つために、体重の数字だけでなく「何を減らし、何を残すか」を考えることの大切さをお伝えしました。
第2回では、その中でも特に重要な「食事量が減ったときの低栄養と筋肉減少」に焦点を当てます。
マンジャロなどGLP-1/GIP薬で食欲が落ちたときに注意したい低栄養や筋肉減少について、体重だけでは分からない減量の質、タンパク質の摂り方、無理なく筋肉を守る食事と運動の考え方を解説します。


「ピンピンコロリを日常生活に。」

横濱おなか診療所では、体重の数字だけではなく、自分の足で歩き、自分の口で食べ、好きな場所へ出かけられる時間をできるだけ長くすることも大切だと考えています。
「痩せることの先にある健康を考える」シリーズ第2回は、減量中の低栄養と筋肉減少がテーマです。

体重が減ることは、ダイエットの大きな目標の一つです。
しかし、体重が減った後も元気に歩き、食べ、生活を楽しむためには、脂肪だけを減らし、筋肉や体力をできるだけ守ることが重要です。

今回は、GLP-1・マンジャロによる減量中だからこそ考えたい「栄養と筋肉」のお話です。

「食べないほど痩せる」は正解でしょうか?

「マンジャロを始めてから、驚くほど食欲がなくなりました」
「以前の半分くらいしか食べていません。もっと食べなければ、その分もっと痩せますよね?」
診療の場では、このような疑問が出てくることがあります。

確かに、マンジャロ(一般名チルゼパチド)のようなGLP-1/GIP受容体に作用する薬では、食欲が抑えられ、少ない量でも満腹感を得やすくなります。
体重管理にとって、この作用は大きな助けになります。

ただし、ここでぜひ知っていただきたいことがあります。
「食欲が落ちること」と「必要な栄養まで減らしてよいこと」は同じではありません。

体重を減らすためには、摂取するエネルギーが適度に減ることが必要です。
しかし、食事量が大きく減れば、タンパク質だけでなく、鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ビタミン類などの摂取量まで一緒に減ってしまう可能性があります。

2025年に米国の複数学会が合同で発表したGLP-1治療中の栄養に関するアドバイザリーでも、摂取エネルギーの低下に伴う栄養不足や筋肉・骨量への影響に注意し、食事と運動を組み合わせて管理する重要性が示されています。

つまり、GLP-1ダイエットでは「どこまで食べずにいられるか」を競うのではなく、食べる量が少なくなったからこそ、何を食べるかが以前より大切になると考えてください。

GLP-1・マンジャロで食事量が減るときに起こり得ること

分かりやすくすると、次のような流れです。

食欲が低下する

食事全体の量が減る

タンパク質・ビタミン・ミネラルなどの摂取も減る

筋肉を維持する材料が不足する

筋肉量や体力が低下する可能性がある

もちろん、マンジャロを使えば必ず低栄養や筋肉減少になる、という意味ではありません。

むしろGLP-1/GIP薬は、適切な方に使用すれば大きな体重減少が期待できる有力な治療手段です。
大切なのは、薬そのものを良い・悪いで考えるのではなく、薬がよく効いている期間をどう使うかです。

GLP-1/GIP薬を否定するのではなく、「薬だけで治療を完結させない」こと、そして薬が効いている間に栄養・筋肉・生活習慣を整えることが重要です。

私は、この期間を「食べない練習をする時間」ではなく、これから続けられる食事や生活の形を作る時間と考えることが大切だと思います。

「マンジャロについて詳しく知りたい方はこちら」
https://yokohama-onaka.com/medical/medical12.html

体重が減っていても「筋肉まで減っていないか」を考える

減量すると、減るのは脂肪だけとは限りません。

チルゼパチドを用いたSURMOUNT-1試験の体組成サブ解析では、72週間で大きな体重減少が得られ、その多くは脂肪でした。
一方、DXAという方法で測定した除脂肪量も減少しており、減った体重のおよそ4分の1が除脂肪量でした。

なお、「除脂肪量」は筋肉そのものと完全に同じ意味ではなく、水分なども含みます。
そのため、この数字をそのまま「筋肉が4分の1減った」と解釈することはできません。

ここで大切なのは、GLP-1/GIP薬だけが特別に筋肉を減らす、という話ではありません。

大きく体重を減らすときには、どのような方法でも脂肪とともに除脂肪組織がある程度減ることがあります。

だからこそ、「10kg減った」という数字だけでは減量の質を十分に評価できません。

同じ10kg減でも、
脂肪をしっかり減らして、筋肉や体力をできるだけ保てた10kg減と、
食べる量を極端に減らして、筋肉や体力まで大きく落ちた10kg減では、その後の健康という意味が違います。

減量で大切なのは、「何kg減ったか」だけでなく「何を減らし、何を残したか」です。

痩せることの先にある健康を考えるなら、体重計の数字だけでなく、日常生活の中で身体がどう動いているかにも目を向ける必要があります。

「フレイルと筋力・食欲の変化について詳しくはこちら」
フレイルと健康寿命の記事

中高年以降は、筋肉を守る意味がさらに大きくなります

40代、50代、60代と年齢を重ねるほど、「体重を軽くすること」と同時に「動ける身体を維持すること」が重要になります。

筋肉は、単に見た目を引き締めるためのものではありません。
立ち上がる。歩く。階段を上る。買い物へ行く。旅行へ出かける。
こうした毎日の生活を支えているのが筋肉です。

特に高齢になると、食事量や活動量の低下が重なり、筋肉量や筋力が落ちていくサルコペニアや、心身が弱りやすくなるフレイルにも注意が必要になります。

「体重は順調に減っています」という方でも、

「以前より疲れやすい」
「階段がつらくなった」
「立ち上がるときに力が入りにくい」
「歩く速度が遅くなった」という変化があれば、体重計の数字だけでなく、食事や筋力にも目を向けてみてください。

痩せた後も自分らしく生活するためには、体重を減らすことと同じくらい、筋肉や体力を守ることが大切です。

減量中こそ「何を減らし、何を残すか」

では、食欲が落ちているときに何を意識すればよいのでしょうか。

1.まずタンパク質を意識する

食べられる量が少ないときは、毎食どこかに「タンパク質のある食品」を入れることから考えてみましょう。
肉や魚だけでなく、卵、豆腐・納豆などの大豆製品、牛乳・ヨーグルトなども選択肢です。

例えば朝食がパンとコーヒーだけなら、
「卵を1個加えてみる」
これだけでも立派な一歩です。

必要なタンパク質量は年齢、体格、活動量、腎機能などによって異なります。
特に腎臓病などで食事制限を受けている方は、自己判断で大量のタンパク質やプロテインを追加せず、主治医や管理栄養士へ相談してください。

2.少ない食事量でも栄養の密度を落としすぎない

食欲がないと、つい「おにぎりだけ」「パンだけ」「麺だけ」で済ませてしまうことがあります。
食べられる量が少ないときほど、一食の中にタンパク質源や野菜などを組み合わせることを意識します。

これは「たくさん食べてください」という意味ではありません。

量を無理に増やすのではなく、少ない量の中に必要な栄養を残しておくという考え方です。
吐き気、下痢、便秘などで十分に食べられない状態が続く場合には、我慢して治療を続けるのではなく、処方した医師へ相談してください。

3.筋肉には「食べること」と「使うこと」の両方が必要

筋肉を守るためには、材料となる栄養だけでなく、筋肉を使う刺激も必要です。
最初から毎日30分の筋力トレーニングを目標にする必要はありません。

例えば、
「夕食後に10分歩く」
「椅子からゆっくり立ち上がる運動をする」
「慣れてきたらスクワットを数回追加する」

程度から始めてもよいでしょう。

GLP-1治療中の栄養に関する共同アドバイザリーでも、適切な食事とともに筋力トレーニングを取り入れ、筋肉や骨を維持することが重視されています。
運動は、体重を減らすためだけに行うものではありません。痩せた後も歩く、立つ、出かけるといった生活を続けるために、筋肉へ刺激を与えることも大切です。

「食べる量を減らす」と「必要なものを食べる」は矛盾しません

ここが今回、一番お伝えしたいところです。
肥満治療では、食べ過ぎていたエネルギーを減らすことが必要です。
一方、健康を保つためには、身体に必要な栄養を摂ることも必要です。

この二つは矛盾しません。

例えば旅行の荷物を軽くするときも、「荷物を減らす=必要なものまで全部捨てる」ではありません。
不要なものは減らしても、財布や薬、着替えなど必要なものは残します。

食事も同じです。
減らしたいのは過剰なエネルギーであって、健康を維持するために必要な栄養まで削ることが目的ではありません。

「食べないこと」ではなく、「必要なものを残しながら、余分なものを減らすこと」が、健康的な減量の基本です。

こんな変化があれば一度相談してください

GLP-1・マンジャロなどを使用していて、次のような状態が続く場合は、一度処方医へ相談してみてください。

  • 食欲がほとんどなく、食事が十分に取れない
  • 吐き気や嘔吐、下痢などが続いている
  • 想定以上の速さで体重が減っている
  • 強いだるさ、ふらつきがある
  • 筋力や体力が明らかに落ちた
  • 水分も十分に取れない
  • 「痩せるのが怖い」と感じるほど体重が落ちている

薬の量を自己判断で増減したり、中止したりするのではなく、体重の変化、食事量、副作用、血液検査などを確認しながら調整することが大切です。

まず一つ変えるなら

すべてを一度に変える必要はありません。
もしGLP-1ダイエット中で食事量が減っているのであれば、まず今日の食事を見て、

「この食事にタンパク質のあるものは一品入っているかな?」
と確認してみてください。

そして余裕があれば、食後に5~10分歩いてみる。
そのくらいの小さな行動からで十分です。

「毎日30分運動する」「食事を完璧に整える」といった大きな目標ではなく、「夕食後5~10分歩く」「朝食に卵を1個加える」といった小さな行動へ落とし込むことが、長く続けるためのコツです。

まとめ|目標は「軽い体」だけではなく「動ける体」

GLP-1/GIP薬は、食欲を抑え、体重管理を助けてくれる強力な選択肢です。
だからこそ、薬が効いている時期を「できるだけ食べない期間」にしてしまうのは、少しもったいないと私は考えています。

食欲が落ちている今だからこそ、
「何を食べればよいだろう」
「筋肉をどう守ろう」
「これから続けられる食事は何だろう」

と考える時間にしてみてください。

目指したいのは、体重計の数字だけが小さくなることではありません。脂肪を適切に減らしながら、食べる力と動く力をできるだけ守ることです。

痩せることの先にある健康とは、体重が軽いことだけではありません。

自分の足で歩けること。
自分の口で食べられること。
好きな場所へ出かけられること。
日常生活を自分らしく続けられること。

それは、横濱おなか診療所が大切にしている「自分らしく動ける時間を少しでも長くする」という考え方にもつながっています。

「横濱おなか診療所が考える『ピンピンコロリ』について」
「ピンピンコロリを日常生活に。」について


Q&A

Q1.マンジャロを使って食欲がないときは、無理に食べなくてもよいですか?

少し食事量が減ること自体は薬の作用として想定されますが、ほとんど食べられない状態を長く続けることは勧められません。

特にタンパク質や水分まで十分に取れない、強い疲労やふらつきがある、急速に体重が減っている場合は、薬の量や治療方針を含めて処方医へ相談してください。

Q2.マンジャロを使うと必ず筋肉が減りますか?

必ず大きく筋肉が減るわけではありません。

体重減少では脂肪だけでなく除脂肪量もある程度減ることがあります。
チルゼパチドの研究でも主に脂肪が減少した一方、除脂肪量の減少も確認されています。

大切なのは、体重だけでなく食事、筋力、活動量、必要に応じて体組成も一緒に見ていくことです。

Q3.GLP-1ダイエット中はプロテインを飲んだ方がよいですか?

すべての方にプロテインが必要というわけではありません。

まず普段の食事から十分なタンパク質を取れているかを確認します。
食事だけでは不足しやすい場合には補助食品を検討することがありますが、腎機能や持病によって適量は異なるため、自己判断で大量に摂取することは避けてください。

Q4.体重が順調に減っていれば、治療はうまくいっていると考えてよいですか?

体重減少は大切な評価項目ですが、それだけでは十分ではありません。

食事が取れているか、筋力や体力を保てているか、血糖・脂質などの代謝状態はどうか、治療を無理なく続けられているかまで含めて考えることで、「痩せた先の健康」を評価しやすくなります。

Q5.GLP-1・マンジャロを自己判断で減量・中止してもよいですか?

自己判断で用量を変更したり、中止したりすることは避けてください。

食欲が落ちすぎている、副作用が続いている、体重が想定以上に減っているなどの場合には、その状態を処方医へ伝えたうえで、用量や治療継続について相談してください。


受診相談のご案内

マンジャロなどの治療中に「体重は減っているけれど、これで健康的に痩せられているのだろうか」「以前より食べられなくなった」「筋肉まで落ちていないか心配」と感じる場合には、体重の数字だけで判断しなくても構いません。

まずは今日の食事にタンパク質のある一品を加える、少し身体を動かすなど、できることを一つから始めてみてください。

一方、食事量が極端に少ない、体力低下が目立つ、消化器症状が続く、急速な体重減少がある場合には、処方医へご相談ください。

横濱おなか診療所では、「ピンピンコロリを日常生活に。」を合言葉に、単に体重を減らすことではなく、その先も自分らしく元気に動ける身体を考えながら、食事・運動・生活習慣を含めた体重管理を大切にしています。

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https://yokohama-onaka.com/

 

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